★★★★☆
あらすじ
医学部から心理学、そして写真家と、より良い人生を目指して進路を変更してきた若い女性は、知り合った年上の漫画家と同棲を始める。
ヨアキム・トリアー監督の「オスロ三部作」の第3作。ノルウェー映画。128分。
感想
主人公は医学部から次々と進路を変えてきた女性だ。気が多いとか、一つのことにもっとじっくり取り組むべきだとか、色々と言いたくはなるが、本当はカメラマンになりたかった…などとずっとボヤキながら医者を続ける人生よりはましだろう。逆に、医者になっておけばよかった、と思うこともあるのかもしれないが。
年上の漫画家と同棲し、書店でバイトをする30歳を迎える主人公の日々が、12の章立てで描かれていく。楽しい時に限ってテンションダダ下がりのことが起きたり、自棄になって無茶をしたり、心と体が一致しない行動を取ってしまったりと、人生でありがちな瞬間が綴られている。そんなことあるよなと、苦笑してしまうような可笑しみがある。
主人公は常に自分が主役の最高の人生を送りたいと願っている。だから漫画家の恋人に注目が集まると脇役に追いやられたような気持ちになって凹むし、生活が安定してくるともっと素晴らしい人生があるのでは?と考えるようになる。それに抗おうとする彼女の藻掻きが、人生の悲喜劇を生むことになる。
だがこれは誰にでも当てはまることだろう。時に愚かな選択をしてしまいながらも、皆幸せになろうと必死に生きている。
妊娠・出産といった女性ならではのトピックも織り交ぜつつ、繰り広げられる彼女の人生の物語だ。別れた恋人のその後などを見ると、主人公の人生が別のものになっていたかもしれないなと思ってしまうが、結局人生なんて何がどうなるか分からない、ということだろう。人間万事塞翁が馬だ。
だが、「わたしは最悪。」と常に最善を目指して奮闘する彼女の人生は、こんなものだとあきらめながら生きている人よりも満足度が高いものになるような気がする。きっとやらなかった後悔は少ないはずだ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ヨアキム・トリアー
脚本 エスキル・フォクト
出演 レナーテ・レインスヴェ/アンデルシュ・ダニエルセン・リー/ハーバート・ノードラム
関連する作品
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「リプライズ」
「オスロ、8月31日」
