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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「クレイジー・リッチ!」 2018

クレイジー・リッチ!(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 中国系アメリカ人の女性は、友人の結婚式に出席するために帰国するシンガポール人の恋人に同行するが、彼の実家が世界屈指の大金持ちであることを知って戸惑う。

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感想

 アメリカで苦労した移民の娘が、大金持ちの恋人の実家との家柄の違い、考え方の違いで戸惑う物語だ。古今東西どこにでもあるベタな身分違いの恋物語ではあるが、それをアメリカ映画でほぼ全員がアジア系キャストでやったことは意義深い。

 

 しかも真面目なだけのヒューマンドラマではなく、コメディなのがいい。美男美女だけでなく面白おかしいキャラクターたちも登場し、最近はそうでもなくなってきたが、いつもハリウッド映画の片隅にいるだけだったアジア系の人たちが、主要人物たちと同様にそれぞれ個性があり、多種多様なキャラクターを持っていることに気付かせてくれる。しかもちゃんと笑えて、金持ち一家の父親が「アメリカにはロクに食べられない子供もいるんだよ。ガリガリはイヤだろ?」と子供に食事を促すシーンなどは、固定観念まで吹っ飛ばしてくれた。

 

 

 そんなコメディシーンでは、主人公の大学時代の友人役のオークワフィナが面白かった。登場シーンではすべて笑いをかっさらっているのでは?と思ってしまうほどの打率の高さだ。映画の良いアクセントになっていた。

 

 この友人も相当な金持ち家庭で大豪邸に住んでいるのだが、主人公の恋人はその友人ですらビビるほどの超金持ち一族の御曹司だ。序盤はそれを知らなかった主人公の勘違いや驚き、戸惑いなどが面白おかしく描かれる。タイトルに違わない恋人らのクレイジーリッチぶりは、住む世界が違い過ぎてもう見ているだけでも興味深い。

 

 そして身分違いの恋定番の、家柄の違いによる恋人の家族や友人たちとの間の大きな溝も表面化してくる。主人公はそれらを解消するために苦しみながらも奮闘する。恋人と付き合いを続けるためにそこまでしなければならないのはしんどいなと思ってしまうが、自分を認めさせるためには戦うしかないのだろう。勝手に劣等感を抱いて黙り込んでいては駄目で、ガッツを見せなければならない。

 

 彼女の努力が実り、勝負をかけた友人の結婚式で皆に認められて感動のハッピーエンド、かと思ったら式の終盤に波乱が起き、すべてが台無しになってしまった。そのままなにごともなく終わってくれたら大満足の内容だっただけに、これ以上、何ができるの?と不安になってしまった。しかもまだ一時間弱も残っている。蛇足まみれで尻すぼみになったら悲しいなと心配していたのだが、しっかりと前半を上回ってくる展開が用意されていて感心してしまった。最終的には単なる金持ち礼賛ではなく、庶民の意地を見せつけて金持ちを黙らせる話となっており、カタルシスがあった。

 

 世界中どこの富裕層も大抵ファミリービジネスを大切にしていると思うので、恋人の母親が言っていたようなアジア独特の価値観というものは特に感じなかったが、アジアの金持ちバージョンの身分違いの恋を楽しむことが出来た。音楽も含めてアジア的雰囲気がよく出ていた。

 

 そして当然同様のことがアジアだけでなく、アフリカでも南米でも起きているのだろうなと思いを馳せてしまう。そして日本でも、街で見かける外国人たちにはどんな物語があるのだろうと気になってくる。白人だけで完結してしまう物語だとそんな想像力が働くことはまずないので、ごく一部の人は気に入らないらしいが、この映画の取り組みは多様性の重要性を示唆していると言えるのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョン・M・チュウ

 

原作 クレイジー・リッチ・アジアンズ 上

 

出演 コンスタンス・ウー/ヘンリー・ゴールディング/ジェンマ・チャン/リサ・ルー/オークワフィナ/ハリー・シャム・ジュニア/ケン・チョン/ミシェル・ヨー/ロニー・チェン/ケン・チョン/ソノヤ・ミズノ/ジミー・O・ヤン/ジン・ルージ

 

音楽 ブライアン・タイラー

 

クレイジー・リッチ! - Wikipedia

 

 

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