★★★☆☆
あらすじ
恋人ジョーカーと分かれたハーレイ・クインは、恋人を恐れて手を出せずにいた恨みを持つ者たちに次々と襲撃されるようになる。
DCエクステンデッド・ユニバース第8作目
感想
クレイジーなキャラクター、ハーレイ・クインが主人公の物語だ。ただそもそも彼女がなぜクレイジーなのかは最初に軽く説明されるだけなので、そのキャラクターにあまり説得力が感じられず、リアリティのない浮いた存在に見えてしまう。それなりに名の通ったキャラなので、わざわざ説明するまでもないという判断なのだろう。
彼女は恋人のジョーカーと別れたことで、彼を恐れていた恨みを持つ人たちに襲撃されるようになる。だが彼女が彼らにどんな酷いことをしたのかについても軽い説明しかされないので、感情移入しにくかった。
なにかと起承転結の「起」の部分が省略されてしまっている印象で、スッと物語に入っていきづらかった。騒々しい音楽の使い方と込み入った構成もそれに拍車をかけている。だがこのカオスな感じが彼女らしさを表わしているとも言えるのかもしれない。
やがて主人公は、一人の少女をめぐる争いに巻き込まれていく。彼女の他に何人かの女たちも絡んでくるのだが、どういう存在なのかもよく分からないままに、彼女たちが当然のように主要キャラとして振る舞ってくることに戸惑ってしまった。後で調べたら女刑事以外は皆スーパーヒロインのキャラクターたちだった。このキャラたちはメジャーな存在だったのだろうか。
しかし主人公も含めてだが、彼女らは強くはあるが特殊能力を持っているわけでもないので、スーパーヒーロー(ヒロイン)って何だっけ?とよく分からなくなってくる。今さらながらの根本的な話ではあるが。
クライマックスでは、女たちが手を取り合って敵の勢力と戦う。この共闘シーンは見ごたえがあり、ローラースケートを使ったカーアクションも面白い。ただここでもユアン・マクレガー演じる敵役にそんなに怖さを感じないのがネックとなっている。唐突にマスクをかぶって悪者らしさを出してくるところも滑稽で凄みがなかった。
物語も登場人物も、そのすべてが導入部分で失敗しているように感じてしまう映画だ。何を考えているのか分からないクレイジーさが売りのはずの主人公が、物語が進むにつれて普通になっていくのも残念な感じがあるが、いつまでも支離滅裂な言動をしていてはお話にならないのでこれは仕方がないのかもしれない。
主人公が途中で急に心理学者の顔を覗かせるシーンが一度だけあったが、普段のキャラとのギャップがあってハッとさせられた。いつも馬鹿みたいに振る舞っている彼女だが、そもそもはインテリだし、もしかした全部演技なのかもしれないと思わせるような興味深い瞬間だった。こんなシーンがもっとあればキャラに深みが出ていたはずだ。
それをさらに突き詰めてシリアスにやれば、「ジョーカー」みたいにすることも出来そうだが、なんでもかんでもそうする必要はないのでこれはこれでいい。
スタッフ/キャスト
監督 キャシー・ヤン
原作 Birds of Prey: Black Canary - Oracle - Huntress
製作総指揮 デヴィッド・エアー/ウォルター・ハマダ/ジェフ・ジョンズ/ハンス・リッター/ゲイレン・ヴェイスマン
製作/出演 マーゴット・ロビー
出演 メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ジャーニー・スモレット=ベル/ロージー・ペレス/エラ・ジェイ・バスコ/クリス・メッシーナ/アリ・ウォン/スティーヴン・ウィリアムズ/フランソワ・チャウ/ボヤナ・ノヴァコヴィッチ
音楽 ダニエル・ペンバートン
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY - Wikipedia
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