★★★★☆
あらすじ
知り合いの女性が殺されているのを発見したことから疑われ、逮捕されてしまった男は、隙を見て逃亡し、たまたま知り合った警察署長の娘と共に、無実の証拠を探し始める。
アルフレッド・ヒッチコック監督によるイギリス映画。原題は「Young and Innocent」。84分。
感想
無実の罪で逮捕されてしまった男が主人公だ。突然覚えのない殺人犯にされてしまったら、どうしていいのか分からずに呆然としてしまいそうなものだが、この主人公はたまたま居合わせた警察署長の娘に軽口を叩けるくらいに余裕がある。
シリアスな展開にそぐわない雰囲気だなと違和感があったが、どうやらこれは真面目なサスペンスではなく、笑いもある娯楽映画らしいことが分かってくる。そうだと分かると、その後の署長の娘とのコミカルなやり取りやロマンスが普通に楽しめるようになった。酒場で居合わせた客たちが必要以上に暴れまわるドタバタシーンは、特に可笑しかった。
また、古い映画ながらカーアクションも見応えがあり、車が陥没した坑道に落ちていくシーンなどはなかなかの迫力で、手に汗握るものがあった。80年代の冒険活劇を見ているようなドキドキ感がある。
そして最後はじっくりと、サスペンスとしても魅せる。クライマックスのホテルでのパーティシーンで、楽団の演奏者たちが全員、黒塗りのブラックフェイスになっていたのはポリコレ的にドキリとしてしまったが、それがちゃんとストーリー上の意味があるものになっていたのは感心した。そして、カメラが動き出し、大勢の中から真犯人の顔のアップまで寄るショットはとても印象的で、インパクトがあった。記憶に残るショットだ。
警察がしっかりと捜査すれば簡単に真犯人にたどり着いていたのでは?と思わなくもないが、エンタメ作品として尻上がりに面白くなっていく映画だ。もし今ヒッチコックがこんな映画を撮ったら、どんな風になるだろうと色々想像してしまう。
スタッフ/キャスト
監督/出演
原作 ロウソクのために一シリングを (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (ハヤカワ・ミステリ 1704)
出演 デリック・デ・マーニー/ノヴァ・ピルビーム/ジョン・ロングデン