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「ディア・エヴァン・ハンセン」 2021

ディア・エヴァン・ハンセン (字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

 セラピーとして自分宛に手紙を書く主人公。ある日同級生がその手紙を奪い、その後自殺してしまったことから、遺族に遺書と勘違いされ、死んだ息子の友人として扱われるようになってしまう。

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 ミュージカル映画。137分。

 

感想

 自殺した同級生の親友だったと遺族に勘違いされてしまった高校生が主人公だ。息子の突然の死に心を痛めてどこかに救いを求めるその両親に同情し、誤解だとは言い出せなかったことが始まりなので、仕方がない部分はある。それだけで終われば優しい嘘だったと許されたのかもしれないが、その後も遺族との付き合いが続き、ズルズルと嘘をつき続けることになってしまった。

 

 ただその嘘によって、精神的な問題を抱えていた主人公に良い変化が訪れるから皮肉だ。遺族との付き合いによって家庭のぬくもりを知り、死んだ同級生を追悼する活動の中で居場所を見つけて自信が生まれ、彼女も出来た。人生何が起こるか分からない、と言ったところだが、嘘から始まったことなので素直には喜べない。心のどこかに罪悪感を抱えたまま見ることになって、ずっと気分は重いままだった。

 

 

 そんな中で、孤立する主人公とは正反対の、学校の中心で様々な活動を積極的に行う優等生の女子生徒が、自身も精神的な問題を抱えている事を打ち明けるシーンは印象的だった。苦しんでいるのは自分だけではないと気が付く。だからと言って、お前ももっと頑張れよ、とはならなかったのも良かった。とはいえ、アメリカのポジティブこそが正義という風潮が生み出す闇が垣間見えたような気がするシーンだった。

 

 息苦しい展開がずっと続くからか、普段はミュージカルとはそういうものだからと気にならない歌唱シーンに、イライラしてしまいがちだった。特に、終盤に主人公の母親が息子への想いを朗々と歌うシーンには、もういいから歌わずにさっさと喋ってくれないかかなと懇願したくなった。

 

 最終的に、主人公の嘘は明るみになる。主人公は言い訳の一つとして、理想的な家族に見えた遺族一家の一員になれたような気がして、それが嬉しくて言い出せなかったと打ち明けるのだが、ちょっと意味がよく分からなかった。よその家族といくら親しく付き合ったとしても、それで家族の一員になれるわけなどないことなんて自明のことだ。主人公の精神状態に問題がある事を示しているのかもしれないが。

 

 ずっと罪の意識を感じながら見なければいけない苦行のように辛い映画だ。最後に救いがあるのでまだいいが、それがやって来るのが2時間を過ぎるあたりなのがしんどい。そもそも上映時間が長過ぎるが、せめて贖罪の時間は中盤を過ぎたあたりまでには訪れて欲しかった。精神的に十分な余裕がある時に見ないと心が持たない。

 

スタッフ/キャスト

監督 スティーブン・チョボスキー

 

原作 Dear Evan Hansen (TCG Edition) (English Edition)

 

出演 ベン・プラット/ケイトリン・デヴァー/アマンドラ・ステンバーグ/ニック・ドダニ/コルトン・ライアン/ダニー・ピノ/エイミー・アダムス/ジュリアン・ムーア

 

音楽 ベンジ・パセック/ジャスティン・ポール

 

ディア・エヴァン・ハンセン (映画) - Wikipedia

 

 

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