★★★★☆
あらすじ
第2次大戦のヨーロッパ。ドイツ軍により北フランスのダンケルクに追い込まれてしまったイギリス軍ら連合軍は、撤退戦を行なおうとしていた。
感想
ほとんどセリフもなく展開される物語。これだけたくさんの兵士がいて、皆ほとんどしゃべらず無口なのは不気味だが、それだけヤバい状況にいるのだということを示しているのだろう。誰も不安を口にすることさえなく、じっと思いつめた表情で皆が状況を見守っている。
そんな中で必死に母国に戻るためにあらゆる手を尽くす主人公。しかし、所属していた分隊が壊滅状態となり、一人取り残された場合はどうするべきなのだろう。本来であれば他の隊に合流するべきなのだろうか。だがみな自身の事で精一杯で、他人の事などにかまっていられない。そんな状況では自身で運命を切り開いていくしかない。
しかし何とか船に乗り込み、安心したのも束の間、敵に攻撃されて沈没し、またダンケルクに戻る、というのは心が折れる。陸でも海でもいつ爆撃されるか分からず、ボーッとしていたら置いていかれるし、仲間に見捨てられそうになることもあるなんて、心が休まる暇もない。こんなつらい死にそうな目に遭うくらいなら、もういっそ自ら命を絶った方がいいと思う人間が出てくるのも分からなくはない。
陸の一週間、海の一日、空の一時間のそれぞれの様子が、並行して同時進行していくのは面白いアイデアだ。ギリギリまで味方のために出来ることをしようとするパイロットや、自分たちの世代のせいでこんな事になったのだから、彼らを助けなくてはいけないと使命感に燃える小船の老船長の姿など、見ていると胸が熱くなる。
そして命からがら逃げてきただけの兵士たちを、賛辞でもって迎える国民もいい。どこかの国だったら、恥を知れと石を投げつけるのかもしれない。限りある戦力を大事にするのは合理的で大切なことだ。彼らが「転進」ではなく「撤退」とちゃんと表現し、現実逃避しないで正しい現状認識をしている事に、当たり前なのだが感心する。
それから、ケネス・ブラナーの顔芸だけで状況を説明するシーンが2度ばかりあって、なんか可笑しかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作
出演 フィン・ホワイトヘッド/トム・グリン=カーニー/ジャック・ロウデン/ハリー・スタイルズ/アナイリン・バーナード/ジェームズ・ダーシー/バリー・コーガン/ケネス・ブラナー/キリアン・マーフィー/マーク・ライランス/トム・ハーディ
音楽 ハンス・ジマー
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ