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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「愛の讃歌」 1967

愛の讃歌

★★★★☆

 

あらすじ

 恋人がブラジルに行ってしまった若い女性とそれを見守る島民たち。

 

感想

  タイトルからして高尚な男女の恋愛物語かと想像していたのだが、実際はもっと広い意味での愛、大きな愛を描いた物語だった。島を出て行った青年が残していった恋人と父親、そしてそれを気遣う島民たちの様子が描かれる。

 

 島の船着き場の前にある倍賞千恵子演じる主人公が手伝う売店で、暇な島民たちが溜まってお喋りし、だらだらと過ごしているシーンがなんだかいい。自分の仕事の都合で皆が出たり入ったりしながら、気ままに過ごしている。こんな感じで仕事ができるなら楽しそうだ。

 

 

 そこに集う島民たちはみな個性的。中でも伴淳三郎演じる店主が面白かった。素直にものが言えず、いつもひねくれた事ばっかり言っていて、とにかく面倒くさい。最近はこんな人を見ることがほぼなくなったが、そういう人がいたらすぐに距離を取ったり、そういう人も距離を取られないようにすぐに態度を改めたりしているからなのかもしれない。

 

 そう考えると、そんな人でもありのままの姿で受け入れていた昔は、貧しかったかもしれないが、皆の心に余裕があったのかもしれないなと思ったりもした。許容範囲が広いというか。ただ、今と違って人の移動が少ない時代だったので、どんな奴だろうがこの先ずっと隣人としてつき合っていかなければならないから、というあきらめから来ているのかもしれないが。 

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 売店で互いに憎まれ口をたたき合っている島民たちだが、実は互いをちゃんと気遣っている。相手を思いやり過ぎて、いざとなると何を言っていいか分からなくなり、皆でオロオロする様子は可笑しかった。

 

 そして、息子が戻ってきたのを嬉しく思いながらも、息子の恋人やその面倒を見ていた島の医者の事を考えて、息子を叱りつける父親の姿に目頭が熱くなった。そんな父親を気遣う医者や、その医者を気遣う息子の恋人と、皆が他人の事を思いやっていて、その優しさの連鎖が切ない。まさに人間愛。

 

 こうしてみるとそんな風に皆を振り回す中山仁演じる店主の息子がとてつもなく悪いやつに見えるが、皆が互いに気を使った結果でもあるので、必ずしも彼だけが悪いわけではない。そんな状況の中で、それでもブラジルに行ったことは後悔していないと彼が言い切るのは好感が持てた。今後の人生をちゃんと前向きに生きて行くような気がする。

 

 ラストで島を出て行く主人公。島民たちが顔を揃えて、出て行く船に手を振って見送るシーンはなんだかジーンときた。よくあるシーンではあるのだが、きっと主人公が過去を振り返った時には、絶対このシーンが出てくるはず、と思うような脳裏に焼き付くシーンだった。

 

 彼女にとっては特別な出来事だったとは思うが、当時はこんなシーンが日本各地の島々で何百、何千と行われていたのだろう。そして島の過疎化が進んでいったということになる。古き良き時代が終わっていったという事なのかもしれないが、あの売店でだらだらと過ごして一生を終えるというのもゾッとしなくもないので、単純に時代が変わっただけと捉えた方がいいのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本

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脚本 森崎東

 

原作 ファニー


出演 倍賞千恵子/中山仁/伴淳三郎/千秋実/小沢昭一/北林谷栄/左卜全/渡辺篤/太宰久雄/有島一郎


音楽 山本直純
 

愛の讃歌

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愛の讃歌 (映画) - Wikipedia

 

 

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