★★★★☆
あらすじ
娼婦の少女を助けた事をきっかけに、ロシアン・マフィアを壊滅に追い込もうとする元特殊工作員の男。米ドラマ「ザ・シークレット・ハンター」の劇場版。
感想
最初の30分くらいは、デンゼル・ワシントン演じる主人公が何者なのかが分からないまま物語が進行する。素直に見るとホームセンターに勤める気のいいおじさんで、なんだか頼りがいがある人、といったところだろうか。多分、何か裏のあるすごい人なのだろうなとは予想できるのだが、何も起きないまま進む序盤には停滞感があった。ただこれは人気ドラマが原作なので、観客は彼が何者であるかを知っている前提なのだろう。その前提となる知識があるなら、そうそう、普段の彼はこんな感じ、と安心して見ていられるのかもしれない。
何もない日々を過ごしていた主人公は、ある日、たまたま知り合った幼い娼婦を助けた事から巨大なロシアン・マフィアの組織と対峙することになる。ここでようやく物語が大きく動き出す。組織から派遣された主人公を追う男は何やら妙に存在感があり、これからこの二人のヒリヒリするような戦いが繰り広げられるのかとグッと期待が高まったのだが、その後はずっと主人公のターンだった。反撃を許すことなく、ずっと優位に立ち続ける。
この映画は、主人公が巨悪に対して決死の戦いを挑むというよりも、悪い奴らを懲らしめていく物語と考えた方が良い。最初はそれに気づかず、強すぎる主人公に呆れる部分もあったのだが、段々と仕組みが分かって来ると逆にそれが気持ちよくなってきた。
圧倒的な強さで敵を倒していく主人公の姿には爽快感があったが、主人公が戦いの度に必ずどこかに傷を負い、その後に治療を施すシーンがあるのは気になった。どうせなら傷ひとつ負わないくらいの無敵でいてほしいと思ってしまったが、もしかしたら正義をなすには無傷ではいられない事を示唆しているのかもしれない。昔も今も正義の名のもとに他国を侵略し、戦争を始める国があるように、正義とはそんなに分かりやすい絶対なものではない。
クライマックスは敵勢力とのホームセンターでの対決となり、何でも揃っている店内でそれらを活用して戦う姿は面白かった。特に電動ドリルで敵の首にゆっくりと穴を空けるシーンは好きだった。主人公を慕っていたホームセンターの元同僚が一緒に勇敢に戦うのも熱い。そして敵役を気持ちよく倒してそれで終わりではなく、ちゃんと本丸まで切り込み「根治」しようとするのも安心感があって良かった。
この戦いをきっかけに、これまでひっそりと生きてきた主人公が、世の中に貢献しようと動き始める所でエンディングを迎える。若干、バズって調子に乗ってしまった人のようにも見えなくはないが、圧倒的な能力があるのならそれを活かすべきだろう。水戸黄門的にいくらでも続編が作れそうな物語だ。だからこそドラマシリーズとしてやっていたのだろう。
スタッフ/キャスト
監督 アントワーン・フークア
製作/出演 デンゼル・ワシントン
出演 マートン・ソーカス/クロエ・グレース・モレッツ/デヴィッド・ハーバー/ビル・プルマン/メリッサ・レオ
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
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