★★★★☆
あらすじ
結婚45周年のパーティーを一週間後に控えた夫婦。夫の元に昔の恋人に関する手紙が届く。原題は「45 Years」。
感想
結婚してすぐならともかく、45年後に結婚前につき合っていた元恋人の事で夫婦仲にひびが入ることもあるのだなと、人生の不思議を感じてしまう映画だ。
昔の恋人に関する手紙を受け取ってから様子がおかしくなる夫と、それを怪訝な表情で見守る主人公である妻。主人公はその存在は知っていたが、夫の元恋人に対する想いがそれほど強かったのかと驚いている。これまで二人で仲睦まじく暮らしてきたつもりだったのに、いつも夫の心には別の女の存在があったかと思うと、これまでの時間は思っていたのとは全く別のものだったのではないかと不安を覚えている。これは逆に、一緒にいた時間が長ければ長いほど、その不安が強くなってしまう類の問題かもしれない。
だが一方の夫は、おそらく元恋人の事はとっくに終わった話としてけりがついていて、ただ単に当時を懐かしんでいるだけのような気がする。だからこそ妻にそれを無邪気に話せるのだろう。そして久しぶりに昔の出来事を思い出して、気持ちが若返っている。かつての関心事に再び関心を持ったり、急に活動的になったり。おかげでこれまで同じように歩調を合わせて歳を重ねてきた妻や友人との間に溝が出来てしまっているのは事実だが。友人の事が年寄り臭く思えたり、元同僚たちと会って自分が老いた事を再確認するのが嫌になったり。だがこれもおそらくは一時的な事のような気がする。結局は現実を受け入れ、皆と同じように年相応に過ごすようになるはずだ。
そんなすれ違う夫婦の様子が、結婚45周年パーティーの一週間前から描かれていく。日ごとに不信感が募っていく様子がセリフではなく、主演のシャーロット・ランプリングの微妙な表情や体の動きだけでほとんど表現されており、見ごたえがある。クライマックスは、傍から見てれば感動的なはずの45周年結婚パーティーだ。その最後のダンスシーンでの彼女のどこか浮かない表情が印象に残る。もはやこれは誰にもどうしようもないことで、すべては彼女自身の捉え方次第だ。彼女がどう気持ちを整理するのか、それに夫婦の今後はかかっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 アンドリュー・ヘイ
原作 In Another Country: Selected Stories (English Edition)
出演 シャーロット・ランプリング/トム・コートネイ/ジェラルディン・ジェームズ