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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「 八犬伝」 2024

八犬伝

★☆☆☆☆

 

あらすじ

 戯作者・滝沢馬琴は「南総里見八犬伝」を構想し、完成に向けて心血を注ぐ。

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 「南総里見八犬伝」を題材にした山田風太郎の同名小説を、役所広司主演で映画化。149分。

 

感想

 「南総里見八犬伝」ではなく、山田風太郎の同名小説を映画化した作品だ。原作は未読だが、里見八犬伝の物語世界と作者の滝沢馬琴らの現実世界が交互に描かれているようだ。

 

 映画は物語世界の始まりからスタートする。だが地味な配役と稚拙なCG、大げさな三文芝居で、一気に残念な気持ちにさせられる。ワクワク感がゼロで、まったく引き込まれない。そんなことより主役は誰?見どころはどこ?と不安になってしまった。大事な映画のツカミを完全に失敗している。

 

 心躍らない長めの物語世界パートがひと段落つき、次は現実世界パートが始まる。主人公・滝沢馬琴を演じる役所広司が登場したことで、ようやく物語の核が見え、少し心が落ち着いた。物語世界のキャラたちのクサかった演技も、きっと虚構の世界であることを示すためだったのだろうと自分を納得させることが出来た。

 

 

 だが気を取り直して見始めたこの現実世界パートも駄目だった。テンポは遅いし、結局大仰な演技とセリフ回しでキレがない。そして何よりも面白くない。だらだらと何がやりたいのだか分からない展開が続くだけだ。辛い。

 

 その後はつまらない物語世界とつまらない現実世界を交互に眺める時間がただ続く。物語パートはダイジェスト的でストーリーがよく分からないし、現実パートは各人物や人間関係の描写が足りず、どちらもまったく感情移入できなかった。まったく物語に入っていけなさ過ぎて、なぜか滝沢馬琴の妻が縁側で息絶えたシーンには爆笑してしまった。

 

 この映画は八犬伝の物語世界が魅力的であることが大前提なのに、そうでないのが致命的だ。結局、誰が誰なのかさえよく把握できなかった。SNSのフォロワー数で配役したのかな?と思ってしまうほど、誰も印象に残らない。

 

 それから「南総里見八犬伝」のストーリーを、観客がどの程度把握していると想定して作っているのかも気になった。自分も含めてほとんどの人は、なんとなくの雰囲気で知っているだけで、細かいことはあまり知らないのではないだろうか。

 

 物語パートと現実パート、どちらかが面白ければまだ救いはあった。ただ面白い映画が見たかっただけなのに、なぜかひどい映画を二本も見させられたような気になる奇特な映画だ。拷問で使えそうだ。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本 曽利文彦

 

原作 八犬伝 上 (角川文庫)

 

出演

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内野聖陽/土屋太鳳/渡邊圭祐/鈴木仁/板垣李光人/水上恒司/松岡広大/佳久創/藤岡真威人/上杉柊平/栗山千明/中村獅童/尾上右近/磯村勇斗/大貫勇輔/立川談春/黒木華/寺島しのぶ/小木茂光/河合優実/忍成修吾/神尾佑

 

八犬伝

八犬伝

  • 役所広司
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八犬伝 (山田風太郎) - Wikipedia

 

 

登場する作品

現代語訳 南総里見八犬伝 下 (河出文庫 古 1-3)

 

 

登場する人物

滝沢馬琴/葛飾北斎/お路(土岐村路)/鶴屋南北/市川團十郎 (7代目)/尾上菊次郎 (3代目)/渡辺崋山

 

 

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