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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「バービー」 2023

バービー

★★★★☆

 

あらすじ

 自分たちの世界で幸せに暮らしていたバービーは、ある日心身の異変に気付き、原因を探るために人間の世界に行って自分の持ち主を探そうとする。

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  着せ替え人形バービーの映画化作品。マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング出演、グレタ・ガーウィグ監督。114分。

 

感想

 バービー人形を題材にした映画だ。冒頭の「2001年宇宙の旅」のパロディに笑ってしまったが、あちこちに笑いが散りばめられたコメディになっている。子供がニコニコするというよりも大人がニヤリとするタイプの笑いが多い。

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 きっと子供はバービーらしいピンクな世界の雰囲気だけで満足できるのだろう。ちなみにかかとが地面についてしまったとか、マイナーなキャラやグッズとか、細かいバービーネタは自分にはよく分からなかった。

 

 

 最初はイメージ通りのバービーの夢のような世界が描かれるが、やがて主人公に人間世界のリアルを感じるような異変が起こり、原因を探るために現実世界に向かうことになる。そしてバービーの世界とは真逆の現実世界の男性優位社会に戸惑う主人公や、感化されるボーイフレンドのケンの様子がコミカルに描かれていく。

 

 ショックを受けた主人公はバービーの世界に舞い戻るが、そこもすでに感化されたケンによって男性優位社会に塗り替えられていた。びっくりして気絶するバービーが可笑しかったが、気を取り直して仲間と共にバービーの世界を取り戻そうとする。

 

 男なんて投資や「ゴッドファーザー」の話を無知なふりをして聞いてやればチョロいとか、なかなか強烈な男をこき下ろすジョークが散りばめられている。だがそれだけでなく、男性中心になった社会で、「何も考えなくていいから楽」と自ら進んで受け入れてしまう女たちも描かれていて、深みがある。

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 ラストもバービーの世界を取り戻して一件落着、としてしまうと、ただ男性優位社会が女性優位社会になっただけで、それはそれでどうなのだ?と思っていたのだが、ちゃんとうまい着地点が用意されていた。

 

 その他にも、メキシコとの国境に壁を作ろうとしたトランプ政権を連想させるようなシーンがあったり、主演のマーゴット・ロビーにメタ的に言及するシーンがあったりと、全方位に痛烈な風刺を利かせている。

 

 そして、「白人の救世主」のくだりが典型的だが、啓蒙的な内容に対する反発も想定し、あらかじめ先回りしてしまっているそつのなさもある。バランスが良くて、皮肉の対象となって気分を害したとしても、一方的には怒りづらい。主人公自身もバービー人形で遊ぶのは子供だと偏見を持っていた。

白人の救世主 - Wikipedia

 

 考えてみればこの映画自体も、本当なら最初のイメージ通りのバービーの世界を描いて終わるのが定石だろう。だがそのイメージとは正反対の物語にしている。これもきっとあるだろうステレオタイプな女性像に対する批判に先回りしたかたちだ。

 

 バービー人形のファンが反発しそうな映画化作品だが、多くの人に受け入れられたというのがすごい。映画化と言いながらオリジナルのバービー人形の物語が存在しないことが良かったのかもしれない。それぞれが好きに想像して遊ぶ人形なので、これもそんな想像上の一つの物語として受け入れられたのだろう。説教臭くなく、楽しくセンス良く作られているのも大きい。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 グレタ・ガーウィグ

 

脚本 ノア・バームバック

 

原作 バービー(Barbie) ドール&ファッション パーティースタイルセット きせかえ人形・ハウス ままごと・ごっこ遊び バービー人形 3歳から ピンク HYT61

 

製作/出演 マーゴット・ロビー

 

出演 ライアン・ゴズリング/ケイト・マッキノン/アレクサンドラ・シップ/エマ・マッキー/デュア・リパ/キングズリー・ベン=アディル/シム・リウ/チュティ・ガトゥ/ジョン・シナ/マイケル・セラ/エメラルド・フェネル/アメリカ・フェレーラ/アリアナ・グリーンブラット/ウィル・フェレル/リー・パールマン/(声)ヘレン・ミレン

 

音楽 マーク・ロンソン/アンドリュー・ワイアット

 

バービー

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バービー (映画) - Wikipedia

 

 

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