★☆☆☆☆
あらすじ
何年も作品を発表しないで地方で暮らす小説家は、ひょんなことから偽札を手に入れてしまう。
藤原竜也主演、佐藤正午の同名小説が原作。119分。
感想
地方でフラフラする書かなくなった小説家が事件に巻き込まれる物語だ。風間俊介演じる男との出会いが事の発端となる。だがこの出会いが、深夜のガラガラの喫茶店で本を読んでいた男に主人公が相席を申し込むもので、「何この気持ち悪いシチュエーション…」とドン引きしてしまった。
若い女性はいつもこんな目に遭っているんですよ、と伝えるフェミニズム的演出ならいざ知らず、そういうわけではないのだから、もっと必然性を感じる自然な出会いにして欲しかった。おかげでキモさだけが印象に残り、男の存在感は薄くなってしまった。
そして何か面白いことが起きそうな気配をぷんぷんと漂わせながら物語は進む。いつ物語が本格的に動き出すのだろうと思いながら見ていたのだが、いつの間にか主人公が何かに怯えており、どうやら物語はすでに始まっていたようだと気付いた。
ただ主人公がなにに怯えているのかがよく分からない。おそらく偽札を手に入れたことに慌てているらしいのだが、別に意図的に盗ったわけでもないので慌てる必要はないように思える。よく知らない町の有力者らしき人物に怯えるのもよくわからない。
その他にも、主人公が書いている小説の面白みがどこにあるのかもよく分からないし、編集者が「それは本当に創作なの?実話ではないの?」とコミカル風味に疑うシーンもどこが笑いどころなのか分からない。それに一家が失踪した事件も、なにがそんなに皆の興味を引くのかも分からない。とにかく分からないことだらけで、キョトンとしてしまう。
おそらくは起承転結の「起」の部分を失敗してしまっているからだろう。だからその後になにをやってもピンと来ない。なにかが起きていることは分かるが、それがなんなのかがさっぱりわからない映画だ。物語の肝が見えない。
それでも面白くなりそうな雰囲気だけはあるので、集中力が途切れることなく見ていられた。だが本来ならば佳境となる終盤に、序盤に少し登場しただけの男の話がなぜかメインとなり、何の感情移入も出来なくなって困ってしまった。半分忘れかけていた男の失踪の真実とか愁嘆場だとかどうでもいい。終盤は「どうでもいい」の連発で虚無感に襲われた。
それから、舞台が富山県で方言(富山弁?)を喋るキャラも登場するのだが、これほど方言が無意味な映画も珍しい。単なるノイズでしかなく、なんの効果も生んでいなかった。
偽札の三万円が巡り巡って主人公にやってきた経緯は一瞬興味深く感じたが、すぐに正気に戻って「だから何?それが何?」と問い詰めたくなった。そして偽札が、そもそも何のために準備されたものだったのか、最後まで分からなかったことにもイラつく。ガワだけあって中身のない映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 タカハタ秀太
脚本 藤井清美
出演
土屋太鳳/風間俊介/西野七瀬/豊川悦司/佐津川愛美/柿澤勇人/駿河太郎/浜野謙太/岩松了/村上淳/坂井真紀/濱田岳/森下能幸/矢野聖人/安藤聖/ミッキー・カーチス/リリー・フランキー/豊川悦司
音楽 堀込高樹(KIRINJI)
