★★☆☆☆
あらすじ
ブラック企業で働く男は、駅のホームでやって来た電車に飛び込みそうになるが、元同級生だと名乗る男に助けられる。
工藤阿須加、福士蒼汰、黒木華ら出演、成島出監督。114分。
感想
ブラック企業で働く疲弊した男が主人公だ。パワハラ上司を演じる吉田鋼太郎が迫真で、ブラックな職場の雰囲気が良く出ている。今どきここまで露骨なブラック企業あるの?と思わなくもないが、多分日本中にいくらでも、ビックリするくらい普通にあるのだろう。
主人公はそんな職場に耐えられなくなって無意識に自殺を図るが、同級生だと名乗る謎の男に助けられる。そしてどこか浮世離れしたこの男と付き合うようになったことで、人生で大事なものに気付き、生きる気力を取り戻していく。
一見、ハートウォーミングな話ではあるが、それで心が洗われるかと言ったらそんなことは全くなかった。そんなことよりもまずは労働基準監督署に行けよ、とずっとイライラしていた。事件が起きたらまず警察に通報するように、事故が起きたらまず救急車を呼ぶように、ブラック企業に出会ったらまずやるべきことがある。
もうブラック企業を描く物語は、啓蒙の意味も込めて、社員が労基署に駆け込むことまでは前提のルールにするべきだろう。その上で、感動ものだとか、復讐ものだとか、ストライキものだとか、好きに展開すればいい。そうでないと、火事なのにまったく消防車を呼ぶ気配がない物語のようなもので、なんで?とずっと心に引っ掛かって集中できない。
そして友人となった謎の男のアドバイスもありきたりで、特に心に響かない。そもそも関西弁の型破りな男というキャラは、いくらなんでもステレオタイプだし、役者もなり切れていなくて見ていてキツいものがあった。主人公も最初の疲弊した死んだような顔は良かったが、以降は可もなく不可もなくといったところで、ストーリーに推進力は与えてくれない。
生きる気力を取り戻した主人公は、ついにブラック企業を辞めることを決意する。だが怒り狂うパワハラ上司になぜか付き合うものだから、カタルシスはまったくなかった。
しかもタイトル的にどう考えてもここがクライマックスなのに、その後30分もだらだらと話が続く構成が解せない。もう仕事を辞めることが出来たのだから、謎の男が何者だったのか?なんて今さらたいして興味がない。短い後日談で終わらすか、仕事を辞める前にやるべきだった。
ラストも主人公がひとり南の島に脱出、と抜け駆けしたような形となり、それはそれで別にいいけど、だからブラック企業はなくならないのだろうなと思ってしまった。残された者もきっと、卑怯だとか、二度と帰ってくるなとか、罵声を浴びせるのだろう。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 成島出
脚本 多和田久美
原作 ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)
出演 福士蒼汰/工藤阿須加/黒木華/森口瑤子/池田成志/小池栄子/吉田鋼太郎
音楽 安川午朗



