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「ホテルローヤル」 2020

ホテルローヤル

★★☆☆☆

 

あらすじ

 大学受験に失敗した女は、家業であるラブホテルの仕事を手伝い始める。104分。

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感想

 ラブホテルの客や従業員たちの人間関係を描く物語だ。だが最初の、余貴美子演じる従業員のエピソードが薄っぺらすぎて心配になってしまった。色々やりたいから端折ったのか、4コマ漫画を3コマで済ませてしまったような底の浅いエピソードだった。

 

 この調子が続くときついなと思ったが、その後は見られる程度にはまともで安心した。ただしちゃんとしているエピソードと、していないエピソードのムラは大きい。中年夫婦の話は良かった。

 

 

 ただ一貫してコミカルなシーンは失敗している。従業員らが揃って客室の様子を盗み聞きするシーンは、うまく描けばユーモラスなシーンになりそうだが、ここではただ、従業員がそんなことをしているなんて、と嫌な気持ちになるだけだった。笑える雰囲気が作れていない。

 

 更に登場人物が何を言っているのか分からないシーンが多いのも辛かった。方言のせいもあるし、スッと入って来ない伝わりづらい台詞のせいもあるし、録音の問題もある。それを補完するような映像もないので、何もかもがぼんやりとしたまま、物語は進行していく。

 

 周囲の人たちのそこそこのエピソードが続き、最後は主人公自身の話となる。大人のおもちゃの営業マンを誘って関係を持ったりしたら、それこそポルノの世界だろうと思っていたのに、その方向に突き進んでいくのは面白かった。男が、高倉健のように女からの誘いを固辞するのは昔の話だ。主人公が従業員目線ではなく、初めて客目線で客室を眺め、新たな気付きを得たシーンも良かった。

 

 すごく良くはないが、まずまずだったなと思いながらエンディングを迎えるのを待っていたら、ここから創業当時の回想が始まる。これが全く関心を持てないもので、とても辛かった。頭の中に浮かぶのは、どうでもいい、の大きな文字だけだ。

 

 これはつまり、ずっと見ていたのに結局、主人公がどんな人間か分からないままで、感情移入すら出来ていなかったのだなと、思い知らされるだけの時間になっていた。彼女が両親の略奪婚をそんなに気にしていたのかと、ここで初めて知ったくらいだ。

 

 色々と失敗してしまった映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督 武正晴

 

原作 ホテルローヤル (集英社文庫)

 

出演 波瑠//余貴美子/原扶貴子/伊藤沙莉/岡山天音/正名僕蔵/内田慈/冨手麻妙/丞威/稲葉友/斎藤歩/友近/夏川結衣/安田顕

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ホテルローヤル (桜木紫乃) - Wikipedia

 

 

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