★★★☆☆
あらすじ
特殊能力を武器に戦っていた二人の男は警察に捕まり、ともに精神病院に入院させられてしまう。
M・ナイト・シャラマン監督の作品「アンブレイカブル」「スプリット」の続編。原題は「Glass」。129分。
感想
映画冒頭から、詳しい説明がないままに次々と物語が展開していく。ずいぶんと不親切だなと思いながら見ていたのだが、見終わってから分かったことだが、この映画は三部作の第三作目だった。説明を端折るのも当然だ。
前の二作を見ていないのにこれを見るのは完全に見方を失敗してしまっているが、無駄を削ぎ落した攻めた映画として見れば、なんとか内容についていくことは出来る。とはいえ、前二作を先に見ておいた方がいいのは間違いない。
序盤は特殊能力を持ったヒーローとヴィランの対決といった様相だったが、戦う彼らの前に警察が現れ、共に精神病院に送られてしまう。特殊能力の存在を認めない世界で、ブルース・ウィリス演じるヒーロー的存在もリスペクトされることなく普通に病人扱いされてしまうのが面白い。ジェームズ・マカヴォイ演じるヴィラン的存在と同列の扱いだ。
この二人にサミュエル・L・ジャクソン演じる黒幕・ミスター・ガラスを加えた三人の入院生活が描かれていく。彼らが医師に特殊能力を完全否定され、自信を失っていく過程は興味深かった。医師の言葉を真に受けて、自分はスーパーな存在じゃなかったのだと落ち込むようになる。
これはヒーローの話だが、自分は天才だ、神だ、などと主張する精神病患者の言葉を、ただの妄想だと簡単に切り捨てていいのか?と言われているようにも感じた。本当の可能性だってないわけではない。病んだから入院するのではなく、入院したから病んでしまうこともありそうだ。
黒幕の男だけは自身の力を信じており、それを世間に認めさせようと動き出す。前二作を見ていないのでわけのわからない存在だった彼のいる意味が、ようやくここで出てくる。ここから盛り上がっていくはずだったが、実際にはここからがつまらなかった。スーパーヒーローらしく壮大な戦いが繰り広げられるのかと思ったら、病院前で地味に戦うだけだし、三人のつながりを示すエピソードも予想できたというか、すでに明白だったので何の驚きもなかった。しかも皆あっさりと死んでしまう。
中でも一番がっかりしたのは、彼らを全否定した医師が、実は特殊能力の存在を認めていたことだ。特殊能力の存在が認知され、スーパーヒーローの物語が始まったことを描くストーリーなのかと思っていたのに、すでにその物語の枠内にいたことになる。これを受けて対抗する秘密結社が作られたのではなく、すでに秘密結社があった設定には冷めてしまった。
M・ナイト・シャラマン監督なりのひねったスーパーヒーロー映画という感じはあるが、期待を下回る展開が続く終盤はかなり残念だった。ただ、前2作を見たら印象は変わるのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演 M・ナイト・シャマラン
出演 ジェームズ・マカヴォイ/ブルース・ウィリス/アニャ・テイラー=ジョイ/サラ・ポールソン/スペンサー・トリート・クラーク/シャーレイン・ウッダード
撮影 マイク・ジオラキス
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