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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「水で書かれた物語」 1965

水で書かれた物語

★★★★☆

 

あらすじ

 結婚を間近に控えた男は、母親が結婚相手の父親と不倫関係にあることを知る。120分。

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感想

 婚約者は関係を迫り、結婚前だからとそれを拒む主人公は別の女と遊び、母親と婚約者の父親は昔の不倫関係が復活する。盛りのついた大人たちの物語だ。それを下世話ではなく、高尚な雰囲気を漂わせながら描いている。

 

 それだけならお好きにどうぞ、なのだが、彼らに暗い影を落としているのは近親相姦への不安だ。主人公は母親に母親に対するもの以上の愛情を感じており、また婚約者には実は父親の血がつながった兄妹なのではと危惧している。それが主人公に婚約者を遠ざけさせ、母親に引き寄せられる要因になっている。

 

 

 そんな彼らの心の闇が、抽象的で断片的な映像を交えながら表現される。なかでも不穏な気持ちにさせる不協和音のような音楽がとても効果的だ。岡田茉莉子も浅丘ルリ子も妖艶で美しく、それが映像の芸術性に拍車をかける。

 

 彼らだけでなく、周囲の様々な人々の欲望も同時に映し出されている。結婚を控えて堪らなくなり、小学生の主人公にちょっかいを出してしまう若い女や、結婚したばかりの主人公の妻に襲い掛かってしまうその上司などは、さすがにどうかしているとドン引きしてしまうほどだった。だが世の大人たちは皆、そんな欲望を押し殺しながら生きているということなのだろう。

 

 考えてみれば、主人公が気持ちを抑えていたら何も起こらなかった話のような気もしてしまう。ラストの悲劇もなかった。さらによく考えると、そもそも岡田茉莉子演じる母親の美貌がなければ、主人公が闇を抱えることもなかっただろう。彼女に何も罪はないのだが、美しさは時に罪作りだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 吉田喜重

 

脚本 石堂淑郎/高良留美子

 

原作 水で書かれた物語 (1965年)

 

出演 岡田茉莉子/浅丘ルリ子/入川保則/岸田森

 

音楽 一柳慧

 

水で書かれた物語 (映画) - Wikipedia

 

 

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