★★★★☆
あらすじ
ある殺人事件の犯人がホテルに現れるとの情報を入手し、再びホテル従業員に扮して捜査することになった刑事。
「マスカレード」シリーズの第2作目。
感想
木村拓哉演じる主人公のダンスシーンから映画は始まる。スターを堪能するサービスシーンだが、個人的には無駄に長くていきなりイラっとした。一応は終盤の伏線になっていると言えないこともないが、別に無くても困らない程度のものだった。それにダンスが主人公の趣味だとすると、マインド的にはホテル従業員に近いような気がして、刑事とホテルマン、水と油のコンビという趣旨がブレてしまうような気がする。
それから中盤で、捜査のために客の部屋に立ち入ることを認めて欲しいと警察が申し入れをするシーンがあるが、それを受け入れてしまったホテル側の対応にびっくりしてしまった。最初は信用問題だからと断っていたが、条件を付けたところで結局同じ問題は残ったままだろうと全然納得できなかった。こんなホテルには泊まりたくない。
それに警察の要求もかなり横暴だ。一般の民家とホテルでは扱いが違うのかもしれないが、令状もなく勝手に他人の部屋に出入りするとか怖すぎる。必死に捜査していればそうしたくなってしまう気持ちは分からないでもない。だが、臆面もなくそれを口に出してしまったり、実行しようとするのはヤバい。そんな警察がいる国には住みたくない。
なんだか最近の、差別も偏見もぶっちゃけた方がカッコいい、みたいな風潮の影響で、皆のモラルがどうかしてしまったのではないかと不安になってしまった。公権力には盲目的に従ってしまうのもそうだ。案外しっかりと世相を反映した映画となっているかもしれない。
前作とは違って「姉さん、事件です!」的なホテルマンのほっこりエピソードはほぼ無くなり、メインである事件捜査に焦点が絞られている。沢村一樹演じる謎の男の正体も早い段階で読めたこともあり、蛇足感がなく物語に集中できた。そして、そのほっこりエピソードのパターンを逆手に取った展開にしているのも上手い。ただできるだけホテル内で話を完結したいからだと思うが、ホテル外でのことについてはセリフで説明することがほとんどで、分かりづらい上に映画的でなくなってしまうのは残念だった。
難点ばかり色々と挙げたが、なんだかんだでちゃんと見られるエンタメ映画になっているのはさすがだ。手慣れた演出で安心感がある。間一髪で間に合わず、万事休すとなったクライマックスのシーンでは、お前がのんきにタンゴなんか踊っていたからだろ、と主人公に言いたくなったが。
スタッフ/キャスト
監督 鈴木雅之
出演 木村拓哉/長澤まさみ/小日向文世/梶原善/泉澤祐希/東根作寿英/石川恋/中村アン/田中みな実/石黒賢/沢村一樹/勝村政信/木村佳乃/凰稀かなめ/麻生久美子/高岡早紀/博多華丸/鶴見辰吾/篠井英介/石橋凌/渡部篤郎
関連する作品
前作