★★★☆☆
あらすじ
出世競争のために父親を自殺に追いやって銀行の社長となった男に復讐を果たすため、チャンスを窺う男。
感想
主演の真田広之と名取裕子の他に、平幹二朗や渡瀬恒彦、三國連太郎らが出演していて豪華すぎる。あとから見るからそう見えるのか、当時からそう感じたのかは分からないが。なかでも三國連太郎演じる権力者の老人が秀逸だった。ふとした仕草や表情だけで嫌悪感を抱かせるような演技だ。裏ではあくどいことをしておきながら、いざ人前に出たら耳障りの良い言葉がすらすら出てくるところとかも、いかにもありそうで醜悪さに溢れている。
復讐に燃える主人公の他にも、平幹二朗演じる男とかつて付き合っていた女、そして現在その女とつき合っているかつてのライバルで今は社長の男、きな臭い政財界の情報を探る男たちなど、様々な人間模様が描かれていく。ただ欲張り過ぎて、結局どれも中途半端になってしまっている印象がある。
中盤の主人公と名取裕子演じるヒロインとの情感たっぷりの濡れ場は、あまりにもたっぷりで思わず吹き出してしまった。今はこんな感じに描かれることはまずなくて、過激かリアルかのどっちしかないよう気がする。もう今は世の中が、それを特別視するようなロマンは見ていないという事なのだろう。
ついに主人公の復讐が叶うクライマックスは、状況的にカタルシスを得られるようなものではなく、どちらかというと主人公がヤバい猟奇殺人犯に見えてしまって引いてしまった。血だらけの顔が怖い。しかし「ハロペリドール」というものらしいが、人を思い通りに動かせる薬とか、随分と便利なものがあるものだ。
最後はラブストーリー風に終わって、あれ、そんな感じだったっけ?とキツネにつままれたような気分になる。途中で無理やりそっちに舵を切ったような、強引な展開だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 三村晴彦
脚本 仲倉重郎/加藤泰
脚本/製作 野村芳太郎
原作 彩り河(上)
出演 真田広之/名取裕子/平幹二朗/米倉斉加年/夏木勲/石橋蓮司/佐藤充/中野誠也/阿藤海/吉行和子/渡瀬恒彦/三國連太郎