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「無宿人別帳」 1963

無宿人別帳

★★★☆☆

 

あらすじ

  罪人として佐渡金山に送られた男たちは、ある日脱走を企てる。

 

感想

 佐渡金山に送られ、人間扱いされずに働かされる男たちの物語。罪人たちだけあって色々と個性的な面々なのだが、どのキャラも大してちゃんと描かれていないのが残念だった。佐田啓二演じる主人公ですら、いまいちそのバックグラウンドがよく分からない。思いやりのある人情派の年長者や威勢はいいがいざとなると尻込みしてしまう若い男など、ドラマや映画でこんなタイプのキャラクターを見た事があるでしょ?察してよ、と観客に描写不足を補ってもらおうとし過ぎてしまっている印象だ。

 

 彼らは皆、島流しになる程の悪人たちなので、互いにバチバチにやり合うのかと思いきや、案外と手を取り合って仲良く協力し合っていたのが微笑ましかった。仕事中は助け合うし、終われば雑談したり博打をしたり。けが人がいればちゃんと面倒も見てやっていて、まるで工事現場の飯場のような雰囲気だ。皆そんな風に出来るなら、悪事なんか働かないで最初からそうしていれば良かったのにと思ってしまったが、きっと彼らはそれを続けることが出来ないのだろう。勤勉に働いていたとしても、ある時甘い誘惑に負けてしまったり、ふと魔がさして悪事に手を出してしまう。

 

 

 キャラクターの描き方が中途半端なのと同様に、ストーリーにも中途半端さが目立つ。主人公とかつての恋人との物語も、金山運営に関する不正を暴く物語も、しっかりと描かれることなく進んでいってしまう。島抜けする罪人たちのリーダー格を演じる三國連太郎の、人間の本性をさらけ出すようなねちっこい演技や、抜け目なく立ち回って立身出世を画策する奉行所役人を演じる長門裕之の野心的で飄々とした振る舞いなどは見ごたえがあって何とか物語を引っ張っていくのだが、肝心の彼ら自身の物語も煮え切らないものなので、結局は物足りなさが残ってしまう。

 

 最後も、苦労してなんとか島を脱出できる状況までたどり着いたのに、それまでの苦労をすべて水の泡にしてしまうような、それでいて物語としては割とベタな展開になってしまって納得がいかない。罪人だからといって人間扱いしないのは間違っている、というようなヒューマンドラマにしたかったような意図を映画に感じたが、それなら島を脱出して、どこかで平和に暮らすほうがよほどヒューマニズム溢れるような気がする。死を覚悟した時点でなんか違うなと思ってしまった。特攻隊じゃないのだから。

 

スタッフ/キャスト

監督 井上和男

 

脚本 小国英雄

 

原作 佐渡流人行 (角川文庫)無宿人別帳 (文春文庫)

 

出演

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岡田茉莉子/田村高廣/長門裕之/三國連太郎/宮口精二/伴淳三郎/左幸子/三上真一郎/西村晃

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無宿人別帳

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