★★★☆☆
あらすじ
劇場を去ろうとしていた脚本家の元に、オーディションをして欲しいという謎の女がやって来る。
フランス映画。96分。
感想
登場人物は二人だけで、劇場の中だけで繰り広げられる密室劇だ。最初は帰ろうとする脚本家と必死に留めようとする女優の間で宙ぶらりんの状態が続き、どっちつかずの落ち着かなさで若干イライラする。
そして女優の勢いに負けて結局オーディションを行うことにした脚本家。 女優役のエマニュエル・セニエはそんなに美人には感じないが、オーディションが始まった途端にガサツそうな風貌からキリっと切り替わるのは見事だった。意外と年もいってるなと思ったら、監督のロマン・ポランスキーの奥さんだった。
マゾの語源となった作家マゾッホの小説を原作とした演劇が題材となっており、二人の微妙に変化していく関係が描かれる。一応はブラックコメディという事らしいが、正直、別に笑える所はなかった。ただ奇妙な二人のやり取りには、魅入られる。
劇中の登場人物と同一視されてしまいがちで迷惑、でも完全に違うかと言われたらそうとも言えない、みたいな劇作家あるあるなどが語られたり、すぐにポリコレを持ちだされる腹立たしさを表現したりと、もしかしたら監督の心情が吐露されているのかなと思ったりしたが、原作の戯曲を反映しただけなのかもしれない。
どんどんと女優のペースに飲み込まれていく脚本家。ときどき必死に反発し怒ったりするのだが、それすらもきっと思惑通りなのだろう。その度に丸め込まれて逃げ場がなくなり、追い込まれていく。
劇場という密室の中で、二人だけで舞台のセリフ合わせをするという設定だが、舞台上だけでなく客席にも移動したりして動きをつけたり、途中で役柄が入れ替わったりと飽きさせない構成となっている。最後は完全に支配下に置かれて脚本家が叫ぶ中、映画冒頭の言葉が再び示されてエンディング。ラストがビシッと決まっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ロマン・ポランスキー
出演 エマニュエル・セニエ/マチュー・アマルリック
登場する作品