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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「暗夜行路」 1937

暗夜行路〈前篇〉 (岩波文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

  父親との間にあるわだかまりや、自分の出生の秘密に思い悩む青年。

 

感想

 思い悩んでいる青年ではあるが、女遊びをしたり反省したり、友人と酒を飲んだりと、普通に生活して気分がころころと変わる姿がリアルだ。どんなに思い悩んでいる人だって年中暗い顔をしているわけではなく、気分が高揚したり笑ったりすることはある。ましてや悩んでいるせいで他に何もできなくなることなんてない。というよりも、他に何もしなくていいような生活が出来るわけがないといった方が正しいか。人生は続く。

 

 そんな日常の中で、主人公が女と会うたびに相手への印象が変わっていくのが面白かった。初対面では美人だと思ってまた会いに行ったら、今度はよく見たらまぁ普通だなとがっかりする。結構こういう事はよくあり、初対面ですべてを決めつけるのではなく、何度も会って相手をいろんな角度から見てみることは大事だ。その時の自分の精神状態だって影響するだろう。

 

 

 相手の印象が会う度に変わるのに、それでも京都で見かけた一人の女性と結婚しようとする主人公。本人関係なく相手方の両親が、自分の家柄などを考慮して良いと判断したら結婚できてしまうこの当時の結婚の風習はすごいなと驚いてしまう。言葉を交わしたこともないような、街で見かけた一目ぼれの女性とも結婚できてしまうわけで、その身分にいたら楽しそうだ。ただ一生の相手としてはリスクがでかいかもしれない。出会う度にがっかりする確率の方が高いはずだ。

 

 忌まわしい出生のいきさつに主人公は悩んでいるが、でも世界のどこかの部族では普通のことだったりするだろうし、親の金で仕事名目とは言いながらも、尾道や京都で気の向くままの日々を過ごせるなんて全然いいじゃないかという気がしていた。だが、結婚してから主人公の妻が起こした事件は、ああやっぱりハードモードかもと思い直さざるを得なかった。

 

 有名な大山での朝日が昇るシーンは確かに見事だ。まるで自分が体験しているかのようで、新しく生まれ変わったような気持ちになった。そして、そこで終わるのか、というすごい終わり方だ。悪くはないが、今まで主人公目線で語られていたのに、急に妻が語りだしたのには少し首をひねりたくなった。

 

著者

志賀直哉

 

暗夜行路 - Wikipedia

 

 

登場する作品

紅い花 他四篇 (岩波文庫)「四日間」

京の四季(「四季の唄」)

碧巌録〈上〉 (岩波文庫)

本朝二十不孝 (岩波文庫)

寒山詩 (岩波文庫 赤 11-1)

千字文 (岩波文庫)

宗門葛藤集 訓注・和訳(しゅうもんかっとうしゅう)

「真夏の夜の夢」*舞台を現代にしたドイツ映画

から騒ぎ (白水Uブックス (17))

 「Unfortunate likeness」 モーパッサン

シューベルト:魔王(エールケーニヒ)

タンタヂールの死

八百屋お七

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不如帰 (岩波文庫)

高僧伝〈1〉 (岩波文庫)

臨済録 (岩波文庫)

 

 

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