★★★☆☆
あらすじ
かつては頼もしかったが今は荒れた生活を送る兄が誘拐されてしまい、その行方を探す弟。原題は「Arsenal 」。
感想
ニコラス・ケイジが主演かと思っていたが違って、敵役だった。しかし、ふざけているのかと思うような胡散臭いキャラクターになっていて、相変わらず彼は面白い。分かっている。そして彼でないとしたら、主役はジョン・キューザックかと思ったのだがこれもまた違って、彼は何のために存在するのか分からないようなチョイ役で出ているだけだった。だがニコラス・ケイジと示し合わせたかのように、彼もまた無駄に怪しい格好をしていて、じわじわと笑えてくる。
主人公はエイドリアン・グレニアーで、貧しい地区で兄弟二人だけで育ち、今は会社を経営をしている男を演じている。彼と昔は頼りになった兄、二人の絆を描いた物語が展開される。兄は定職もなく、怪しい商売に手を染めているようなのだが、兄弟仲は悪くない。二人で野球を見たり、弟の家に兄が招待されたりと何かと交流をしている。いい歳になっても仲の良い兄弟というのは、単純にいいなと思ってしまう。
そんな兄が誘拐されて慌てる主人公。しかし、きっと弟の金を狙った兄の狂言に違いないと皆が疑っている。主人公の妻でさえ同調してしまうほどで兄が可哀そうになるが、皆がそういう事をしかねないと彼を見ているという事だ。だがただ一人、そんな疑いを微塵も持たず、必死で兄の行方を探す主人公。兄の取った言動も後ほど明らかになるのだが、二人の互いを思う気持ち、固い絆に胸が熱くなる。
ただ、幼少期からの兄弟の絆の深さを示すような出来事があまり描かれていないので、なぜそこまで信頼しあっているのかがよく分からないのも事実。いくつか紹介されるエピソードもそんなにインパクトがなく、いまいちピンと来ない。ついでに弟がなんで武闘派な感じでガンガン行くのかもよく分からなかった。貧しい町では喧嘩したり銃を扱えたりする能力というのは標準装備で、それが無いと生き残れないという事なのか。
そして誘拐事件についての描き方も今一つ。これはひとえに、敵役の見せ方が悪いからだろう。せっかくニコラス・ケイジが胡散臭さ満開の演技をしているのに、あんなに出番が少ないのはもったいない。もっと憎悪を煽るようなことをさせて、クライマックスに向けて気分を盛り上げて欲しかった。
最後の対決シーンは、なんとなく「バッファロー66」を思い出した。確かこんなシーンがあったような気がするが、気のせいかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 スティーヴン・C・ミラー
出演 ニコラス・ケイジ/ジョン・キューザック/エイドリアン・グレニアー/ジョナサン・シェック/クリストファー・コッポラ