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「告発のとき」 2007

告発のとき (In the Valley of Elah)

★★★★☆

 

あらすじ

 イラクから帰還後、休日が終わっても基地に戻らず行方不明となった息子を探すため、現地に向かった元軍警察所属の父親。

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 実話をモチーフにした物語。原題は「In the Valley of Elah」。

 

感想

 元軍人の主人公が、地元の女性刑事と協力しながら基地に戻らず行方不明になった息子を探す物語だ。主人公は元軍警察だっただけに、息子を探すための動きがちゃんとしていて安心感がある。然るべき場所で然るべき人に会い、然るべき情報を手に入れていく。この時代のこの年代の男には珍しく、携帯電話やパソコンもきっちりと使いこなしている。そして時には現役の刑事や軍警察を上回る成果を見せており、頼もしかった。

 

 しかし主人公の捜索は、悲しい結末によって早々に終焉を迎えてしまう。きっと息子は戦争が嫌になって逃げたのだろうと思っていたので、これは意外だった。続いて主人公による犯人探しの捜査が始まる。

 

 

 ただここからの捜査の様子は若干分かりづらい。不祥事が露見するのを恐れる軍警察と、面倒事に巻き込まれるのを嫌がる地元警察、そしてその間で思うように動くことが出来ない女刑事と、事件以外の問題が多くを占めるようになる。調査対象の軍人たちも曖昧な態度だ。それに今はただの一般人でしかない主人公が、捜査にそんなにグイグイと関わってもいいの?という危惧もあった。

 

 それでもなんとか犯人が判明する。そこで明らかになった真相には驚かされる。それを平然と語る犯人の不気味な様子や、その前の主人公と言葉を交わした時のシーンを思い出して、怖くなってしまった。軍人はそんなことをしないと断言していた主人公の推理は完全に間違っていたわけだが、戦争が彼らをおかしくしてしまったのだろう。ただ、主人公の従軍していたベトナム戦争と、息子の従軍したイラク戦争ではそんなに違うのか?という疑問は残るが。

 

 だがよく考えてみると、主人公にもおかしな部分がある。女性刑事がやってきた時に慌ててまだ生乾きのシャツを着ていたのが印象的だったが、常に部屋を整え、身なりを正す軍人の習慣を保ったままだ。引退してもう何年も経つのに、まだどこかで戦地にいるような感覚があるのだろう。感情の起伏が少なく生気のない表情が、普通の日常生活をうまく送れていないことを窺わせる。かつての戦友たちがまだ現役だと思っていたことにも、そういう連絡を取り合っていなかったことにも違和感があった。

 

 ラストシーンにはあざとさを感じてしまったが、主演のトミー・リー・ジョーンズの演技でグイグイと引っ張っていく映画だ。戦争がどれだけ人間を狂わせるのか、それがひしひしと伝わってくる。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/原案/製作 ポール・ハギス

 

出演 トミー・リー・ジョーンズ/シャーリーズ・セロン/スーザン・サランドン/ジョナサン・タッカー/ジェームズ・フランコ/ジョシュ・ブローリン/フランシス・フィッシャー/ジェイソン・パトリック/メカッド・ブルックス/ バリー・コービン/ウェイン・デュヴァル/ブレント・ブリスコー

 

告発のとき (In the Valley of Elah)

告発のとき (In the Valley of Elah)

  • ジョナサン・タッカー
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告発のとき - Wikipedia

 

 

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