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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ザ・ロード」 2006

ザ・ロード

★★★★☆

 

あらすじ

 灰が降り積もり、動植物が死滅した荒廃した世界で、南に向かう男と幼い息子。

 

感想

 人類のほとんどが死んでしまい、生き残った者たちが生存競争を繰り広げる世界を旅する親子が主人公だ。ゾンビ映画や「マッドマックス」などで見られる、よくある設定ではある。だがこの物語には、あまり他では見ないような、とてつもなく陰鬱な雰囲気が漂っている。

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 その理由は希望が何もないからだろう。太陽は照らず、動植物は死に絶えて、食物を育てることは出来ない。だから今現在地球上に残っている食料を探すしかなく、やがてそれはいつかなくなる。つまり人類が滅びることはほぼ決まっていて、生き残った者たちはただそれを先送りする努力をしているだけだ。主人公たち親子は南へ旅しているが、それもただ寒さを逃れるためでしかなく、そこに安住の地があるわけではない。たどり着いても全くハッピー・エンドとはならない。

 

 

 ゾンビ映画を見ていると、どうやって自分はサバイブしようかと色々妄想してしまうが、本当にベストなのはさっさとゾンビになってしまうことだと痛感する。生き残ったところでろくなことはない。

 

 旅の途中で遭遇した人々に略奪されたり、人肉食をほのめかすシーンがあったりして、読んでるだけで気が滅入ってくるが、これは寓話的なものとして読むのが良いのだろう。食料が尽きて絶体絶命になると必ず運よく何か食料を発見するところは、いかにもそれっぽい。あきらめることなく探し求めることの大切さが伝わってくる。また豊富な食糧が見つかったからとそこに留まり続けるのは危険で、先に進むときに持って行けるのは全部ではなく自分が持てる分だけ、というのも何か示唆的だ。

 

 食料が見つかったことは嬉しいが、その一方で早く死んで楽になりたいという願望が叶わず、少し落胆してしまう主人公の気持ちは分からないでもない。だがそれでも生きようとするのが生き物の宿命だろう。正しいのか間違っているのか分からないが目標を定め、そこに向かって進む。理想と現実の矛盾を自ら体現しながら、それでも子に希望の光を与え、生きる術を伝えようとする。人生とはまさに旅だ。その道を歩み続けることが何よりも重要だと言える。

 

著者

コーマック・マッカーシー

 

ザ・ロード (小説) - Wikipedia

 

 

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