★★★☆☆
あらすじ
常連リスナーの女性に付きまとわれるようになったラジオDJ。 原題は「Play Misty for Me」。クリント・イーストウッドの初監督作品。
感想
今でいうとストーカーの話。そんな言葉がなかった当時はきっと、この映画の内容について説明しようとすると、たくさんの言葉を重ねる必要があったはずだが、今だと「ストーカーの話」の一言で済んでしまう。そう考えるとネーミング、名前を付ける、という事がいかに重要かが良く分かる。謎の体調不良だって、病名が付けられた途端にれっきとした病気となり、他人に理解してもらいやすくなる。
一晩だけの約束でつき合ったリスナーの女性に、付きまとわれることになってしまったラジオDJ。ストーカーへの対処法が広く知られている今の感覚で見ると、拒絶の姿勢は見せるが優しさも見せてしまう主人公に、どうしてもヤキモキしてしまう。特に、連絡もなくいきなり家に押しかけて来たストーカーの女性に対して、注意しつつも欲望に負けて家に招き入れてしまったシーンは、それはあかん、とつい叫んでしまいそうになった。気持ちは分かるが。
女性のストーカー行為が段々とエスカレートし、中盤でついには決定的な事件が起きてしまう。ここで映画として一旦ひと段落がつくのだが、この後しばらくが謎の時間帯だった。ロバータ・フラックの「愛は面影の中に(The First Time Ever I Saw Your Face)」がフルコーラスで流れる中、主人公と恋人が全裸で抱き合う、まるでジョン・レノンとオノ・ヨーコかと思うようなシーンがあったり、実際の「モントレー・ジャズ・フェスティバル」の様子が映し出されるドキュメンタリー風映像があったりする。
おそらくはストーカ事件が終わって完全に安心しきっているということを表現したかったのだと思うが、なかなか奇妙な時間帯だった。だが何となく当時の雰囲気を窺い知ることができる映像集といった感じで、意外と悪くない。
そして再び恐怖が襲い来るエンディング。しかし今となってはよくある展開で、流れが読めてしまったのが残念。だがヒッチコック風味の伏線のよく効いたサスペンス映画で、「ストーカー」という言葉がなかった上映当時に観ていたら、もっと驚いたり怖がったりしながら楽しめたと思う。
スタッフ/キャスト
監督/出演
出演 ジェシカ・ウォルター/ドナ・ミルズ/ドン・シーゲル
音楽 ディー・バートン