★★☆☆☆
あらすじ
妻と娘を誘拐され、警察の指示に従うも二人を死なせてしまった事業家の男は、その16年後、訪れたイタリアで妻そっくりの女性と出会う。
原題は「Obsession」。
感想
序盤で主人公の妻と娘が誘拐されてしまうので、この事件の解決を描くサスペンスなのかと思ったのだが、悲しい結末であっさりと終焉を迎えてしまう。これ自体は意外性があって、この後に16年後に飛ぶのもダイナミックで良かったのだが、その後は物語がどこに向かうのか、その方向性が見えなくなってしまった。
事件の16年後、商談でイタリアに出掛けた主人公は、妻との思い出の地で妻そっくりの女性と出会う。そして彼女の行動を監視するようになる。ここからストーカーに変貌していく主人公の異常行動が描かれるのかと思ったのだが、あっさりとデートに誘い、やがて付き合うようになってしまった。
しかし死んだ妻にそっくりだからと言い寄る男に、相手の女が好意を持つかなと疑問だ。有名人に似ていると言われたらうれしいかもしれないが、身近な人に似ていると言われたら、代用品のように感じてしまうのではないだろうか。
映画原題の「Obsession(執着)」の通り、主人公が彼女に執着する姿が描かれる。だが、女がそれを理解した上で受け入れてしまっているので特に問題は感じず、そうなるとなんら普通の恋愛と変わらないわけで、その行方にはあまり関心が持てなかった。本人たちがそれで納得しているのだから、外野がとやかく言うことではないだろう。
何がやりたいのだかよく分からないなと思いながら見ていたのだが、終盤に彼女が妻の時と同じように誘拐されてしまい、ようやく方向性が見えてきた。そしてこれまでの物語の裏側が明らかになっていく。だが驚かされるよりも逆に疑問が募ってしまうばかりだった。そういうことだったらあの時の彼女の態度は何?とか、共同経営者の心配は何だったの?とか、そんな金と時間をかけずに出来る方法はあったでしょ?とか色々と考えてしまい、スッキリしなかった。
どことなくヒッチコック映画の雰囲気があったが、「めまい」を意識していたらしい。昔の映画なのでテンポがゆっくりしているせいもあるが、中盤の停滞感がしんどく、盛り上がれないクライマックスにストレスが溜まってしまう推進力の乏しい映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/原案 ブライアン・デ・パルマ
脚本/原案 ポール・シュレイダー
出演 クリフ・ロバートソン/ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド/ジョン・リスゴー
音楽 バーナード・ハーマン