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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ラスト・ターゲット」 2010

ラスト・ターゲット (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 スウェーデンで襲撃された殺し屋の男は、ほとぼりが冷めるまでイタリアの片田舎で身を潜めることになる。原題は「The American」。

 

感想

 冒頭は、雪景色の人里離れた森の中。小さな家の暖炉のある部屋で、恋人と過ごす主人公が映し出される。そんな絵に描いたような幸福な光景から一転する翌日の朝の出来事は、なかなかショッキング。セリフも少なく、まだ何者かも分からない主人公の、突然の非情な行動に驚かされて、良いスタートだった。

 

 こんな感じで、突然のバイオレンスが発生するような激しいアクション映画なのかと思っていたらそんな事はなく、この後は、追手から逃れるためにローマの片田舎で過ごす殺し屋の主人公が静かに暮らす様子が描かれる。

 

 

 主人公はほとんどセリフもなく、誰かと会っても言葉少なで笑顔を見せる事もない。さらには、組織に指定された場所ではない所に潜伏したり、与えられた携帯電話は使わなかったりと、殺し屋らしく誰も信用しない慎重さを見せている。しかし、静かな生活を送る中で、次第に主人公の心境に変化が訪れる。

 

 少し不自然なかたちで神父が登場することからも、キリスト教的、宗教的な暗示がありそうな物語。主人公は誰も信用しないような非情な、いわば地獄のような世界に嫌気がさしてそこから抜け出したいと思う気持ちが芽生え始めている。その対極、安らげる楽園のような世界の象徴は、恋人とピクニックをした、森の中の静かで心落ち着く場所か。

 

 改造銃を依頼した女性が、ブリーフケースの暗証番号に指定した「14」も何か意味があるのかと思ったが、単純に銃の名前「Ruger Mini 14」から取っているようだ。

 

 主人公は足を洗って穏やかな生活を送ろうとするが、この手の組織はそれを簡単には許さない。それでもなんとかしがらみを断ち切り、恋人の待つ場所、楽園へと向かう。しかし、さなぎの状態から蝶になって自由にはばたける、という一歩手前で力尽きてしまった。切なく物悲しい結末ではあるが、最後にそれを目指すことができたという満ち足りた気分もある。

 

 静かで地味な映画だが、意味ありげなシーンが多く、何回見ても新しい発見がありそうな、しみじみとした深みを感じる映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督 アントン・コービン

 

原作 暗闇の蝶 (新潮文庫)


製作 グラント・ヘスロヴ/アン・ウィンゲート/アン・キャリー

 

製作/出演

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出演 ヴィオランテ・プラシド/フィリッポ・ティーミ

 

音楽 ヘルベルト・グレーネマイヤー
 

ラスト・ターゲット (字幕版)

ラスト・ターゲット (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

ウエスタン (映画) - Wikipedia

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登場する作品

食堂のテレビで流れていた映画 

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