★★★☆☆
あらすじ
主人公の検事は不審な交通事故を調査し始めるが、たどり着いた大使館の外交官特権の壁に阻まれてしまう。
人気テレビドラマの劇場版第2作目。
感想
検事である主人公が、外交特権のある大使館の壁を乗り越えて、事件の真相を追い求める物語だ。事件関係者と直接やりとりすることはなく、主人公らが勝手に真実に近づいていくだけなので、ミステリー的には盛り上がりに欠けるところがあった。
そもそも事件の真相も特に凝ったものではなく簡単に予想が付くもので、それを探るのではなく、本当に予想どおりなのかを確認することが主眼となっている。その障壁となっている大使館問題をどうクリアするのかが見どころだ。
その困難な問題の解決方法は、真摯に正義を訴える正攻法だった。主人公だけでなく同僚や上司も同様に正義を貫き、邪魔な存在だった外務省の役人もただ彼の立場で正義を行使しようとしていただけと、登場人物たちも基本的に皆が善人の設定で、あまりにも物語が勧善懲悪すぎないかと思わなくもない。
だがよく考えてみれば、そもそもこの一連のシリーズはそういう物語だった。加害者側から描かれがちな事件に、被害者の視点を持ち込むことで正義とは何かを問い直し、被害者の納得するような形を考えさせようとするコンセプトだ。だから物語としては間違っていない。
今は真正面から正義を訴える人を嘲笑し、そんなことを言っていると人生損するよとリアリストを気取るのがクールと思っている人が多い時代なので、こうやって堂々と社会正義を訴えていく物語は必要だ。すでに検察にとって重要なのは正義よりも政権の顔色らしいと世間が思ってしまっている世の中だ。社会の基本を取り戻す必要がある。
その視点から見ると気になってしまうのが、主人公のキャラクターだ。部下をお前と呼ぶなど意外とパワハラやセクハラの言動が多い。検事らしくない破天荒なキャラ設定の一環ではあるが、今だとちょっと辛いものがある。
しかも他の登場人物が「これはセクハラになっちゃうかー」とかいろいろ気にしている中で、主人公だけが俺は大丈夫とばかりにまったく気にしていないのがまた痛い。現代社会の傾向である弱者は叩くけど強者は叩かないメンタリティーにおもねっているようにも見えてしまい、正義の人なのに社会悪に守られている人になっている。
今後こう言った物語を作る場合は、主人公のようなタイプはもう不要で、それ以外のメンバーのようなキャラクターたちで問題を解決していくストーリーのほうがしっくりくるのかもしれない。主人公のようなキャラが活きてくるのは、世の中が四角四面で窮屈に感じられるようになった時だろう。
スタッフ/キャスト
監督 鈴木雅之
出演 木村拓哉/北川景子/杉本哲太/八嶋智人/濱田岳/小日向文世/吉田羊/正名僕蔵/松重豊/角野卓造/大倉孝二/田中要次/勝矢/森カンナ/新井浩文/イッセー尾形/近藤春菜/峯村リエ/宇梶剛士/児嶋一哉/YOU/三浦貴大
音楽 服部隆之
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前作 劇場版第1作目