★★★☆☆
あらすじ
無慈悲なやり方で暗黒街のトップに登り詰めていく男。
原題は「Scarface」。
感想
強引な手法で暗黒街をのし上がっていく男を描いた物語だ。ボスが慎重にことを進めようとするのに逆らって、主人公は強引に仕事をこなし、急速に力を付けていく。逆らう人間は容赦なく殺し、ルールや取り決めも気にしない。今ではこのようなギャング映画ややくざ映画は山ほどあるのでそれほどでもないが、100年ほど前の当時の観客には刺激的だっただろうことは想像できる。
敵対勢力を倒し、ついには自分のボスまで殺して主人公はトップに立つ。業界の掟や規律を破壊し、恐怖と混乱を巻き起こしながらトップに立つと、その後が大変だ。皆が自分と同じ手口を使うようになると、自分の立場が危うくなってしまうからだ。その後はそれが描かれていくのかと思ったが、妹の扱いを間違えただけのことで主人公は破滅に向かっていく。
それさえ間違えなければ順調だったのに、と思わなくもないのだが、「世界は自分のもの」と思い込む主人公にとっては必然の帰結だったのかもしれない。いい服を着たい、いい家に住みたい、ボスの女も欲しいと、限りない欲望に突き動かされている主人公は、いつまで経ってもきっと満足できない。もっと勢力を拡大しようとしただろうし、部下も家族も思い通りに扱おうとしただろう。そんな調子では遅かれ早かれ、どこかで破綻が訪れるのは避けられない。彼の生き方は成功と破滅がセットになっている。終盤は、その過程を象徴的に表現したと言えるだろう。
古い映画なので、今の感覚で見てしまうと物足りなさはあるが、死をイメージさせるバツ印を何度も印象的に使っていたり、すべてを見せずに観客に想像させるカメラワークがあったりと、演出に見るべきところがある映画だ。もしかしたらバイオレンス描写に対する世間の批判をかわすためだったのかもしれないが、暴力を野放しにする政府を批判するメッセージが冒頭に流れるのもすごい。今なら一部の人たちが発狂しそうだ。
スタッフ/キャスト
監督 ハワード・ホークス
脚本 ベン・ヘクト
製作 ハワード・ヒューズ
出演 ポール・ムニ/ジョージ・ラフト/ボリス・カーロフ
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