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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ミナリ」 2020

ミナリ(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 農園での成功を夢見て、アーカンソー州の田舎町にやって来た韓国系移民の一家。

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 アカデミー賞助演女優賞受賞作。

 

感想

 田舎町に越してきた韓国系移民の物語だ。成功を夢見る夫にそれに従う妻、しっかり者の娘に心臓疾患を抱える息子の4人からなる家族で、後に韓国から呼び寄せた妻の母親を加えた一家の、移民としての暮らしぶりが描かれていく。

 

 この一家でまず気が付くのは、夫婦間に溝が生じていることだ。引っ越し先に向かう冒頭のシーンで、車中から見える景色がどんどんと辺鄙なものになっていくことに、妻が戸惑いの表情を見せていたのは印象的だった。

 

 

 夫は成功を夢見ているが妻はそれには懐疑的で、病気の息子や家族の行く末に気を揉んでいる。夫婦はヒヨコ鑑定の技術があり、手に職を持っているので、妻からすればリスクを負わずにそれでささやかに生きていけば良いと考えてしまうのだろう。これには知り合いもいない知らない土地で暮らす心細さからくる不安もあるのかもしれない。

 

 一方で夫は、わざわざ移民までしたのだから、もっと良い暮らしを目指さなければ意味がなく思えてしまうのだろう。安定した暮らしを求めているのではなく、成功を夢見ている。山師的な事業欲とも言えるが、移民とはそういう側面もあるだろう。

 

 農園運営も順調とは言えず、夫婦はそれまでに培った絆だけで辛うじて関係を維持できているような危うい状態だ。その一方で初対面だった息子と祖母は絆を深めていく。二人のやりとりと変化していく関係がコミカルに描かれて、夫婦が醸し出す緊張感を緩め、和ませてくれる。この祖母が花札をやると途端に口が悪くなるのが可笑しかった。

 

 息子の疾患が改善し、事業にも好転の兆しが見えて、ようやく一家に希望が見えてきた終盤、家族の命運は二転三転することになる。同じ状況でそれぞれが違うことを考えていた。家族なんて何がきっかけでどう転ぶか分からない。強いて言えば、それまでに深めた絆の度合いが、いざという時に影響を与えるのだろう。

 

 一家の姿を見ていると、移民がいかに大変なことなのかが良く伝わってくる。成功させるためには能力だけでなく、家族の団結も必要で、共に手を取り合い、同じ夢を信じて頑張れるかが重要になってくる。それでも運に左右される部分はあり、思わぬ理由で失敗に終わることもある。その場合は、役に立たないオスのヒヨコのように退場せざるを得なくなる。

 

 それから移民と地域を結び付けるために、教会が大きな役割を担っていることも伝わってくる。これは西部劇の時代から変わらないいのだろう。

 

 移民国家であるアメリカでは、韓国系に限らず多くの人たちがこの映画を見て、移民としてやって来た自分の先祖たちの艱難辛苦に思いを馳せたのだろう。タイトルの「ミナリ」は韓国語で野菜の「セリ」を指す言葉だが、世界中からやってきた移民たちがこうやって困難を乗り越え、セリのように根付いてアメリカ人となっていった。

 

 韓国のやり方にこだわっていた夫が、アメリカ流に従おうとするラストシーンは感慨深い。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 リー・アイザック・チョン

 

製作総指揮

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ジョシュ・バーチョフ

 

製作総指揮/出演 スティーヴン・ユァン

 

出演 ハン・イェリ/アラン・キム/ノエル・ケイト・チョー/ユン・ヨジョン/ウィル・パットン

 

ミナリ(字幕版)

ミナリ(字幕版)

  • スティーヴン・ユァン
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ミナリ - Wikipedia

 

 

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