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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ミッション」 1986

ミッション(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

  1740年代、南米の滝の上の村で布教活動を行うイエズス会の宣教師たち。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。

 

感想

 異国の異文化の原住民たちが暮らす村に布教活動のためにやって来た宣教師たちが、現地の植民地社会や本国の意向に翻弄されながらも懸命に活動を続けようとする姿が描かれていく。現地の風景や原住民たちの風俗習慣などといった映像は異国情緒があり興味深いが、この映画で描こうとしていること自体にはかなり欺瞞を感じてしまって素直に楽しめない。

 

 いくら彼らが板挟みで辛いですわーと言ったところで、別にキリスト教徒でもない人間から見れば、彼らだって異国の植民地化に加担する一味でしかない。よく言われることだが、布教活動をする彼らがまず先鞭をつけ、その後に国と商人が進出するという植民地化の方法論が出来上がってしまっている。彼らはそれが本望ではないと思っていたのかもしれないが、それでも都合が良いからとそれを黙認していたわけで、すっとぼけて被害者面されても困る。

 

 

 宣教師たちと原住民たちの交流も本当であれば心温まる場面となるのかもしれないが、そういった背景があるので全然別のものに見えてしまう。たまたま出会った原住民たちの中に入って彼らのやり方に従うのではなく、最初から彼らのやり方を変えるという目的で彼らの中に入っていくわけだから、基本的には侵略と変わらない。それを善意のつもりでやっているのだからたちが悪い。

 

 一応は、自分たちがやって来たことは彼らにとって幸福だったのだろうか?と疑問を投げかけてみたり、イエズス会側の理不尽な言動を描いてみせたりはしているが、全体としては善いことをしているという前提のもとで描いているので、そういった何もかもがあまりにも浅すぎるように感じた。もっと深く見つめ直すべきだろうと言いたくなる。結局はポジショントーク。自分たちは殉教者となれて気持ち良いのかもしれないが、その道連れにされてしまった原住民たちは気の毒としか言いようがない。

 

 映画はずっと政治的軋轢の中で苦労する彼らの様子が描かれていくのだが、終盤になって突然、アクション映画のような雰囲気が出てくる。しかしそれも呆気なく終焉を迎えてしまって「七人の侍」みたいに描いてくれたら盛り上がったのにと思ってしまったが、そんな事をしたら映画の趣旨がブレてしまうのでやらないのは当たり前か。それはいいとして、ロバート・デ・ニーロ演じる元奴隷商人があっさりと宣教師になってしまったり、終盤に他の宣教師たちが上司の命令を簡単に無視してしまったりと、そこはもっと苦悩する姿などを丁寧に描くべきでは?と思うような箇所は多く、後から振り返るといろいろ気になってしまった。

七人の侍

七人の侍

  • 三船敏郎
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スタッフ/キャスト

監督 ローランド・ジョフィ

 

脚本 ロバート・ボルト


出演

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ジェレミー・アイアンズ/リーアム・ニーソン/エイダン・クイン

 

音楽    エンニオ・モリコーネ

 

撮影    クリス・メンゲス

 

ミッション(字幕版)

ミッション(字幕版)

  • ロバート・デ・ニーロ
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ミッション (映画) - Wikipedia

 

 

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