★★★★☆
あらすじ
外国大使から独立時に失った国の宝を取り戻すよう依頼された犯罪者たち。ドートマンダー・シリーズ第1作目。
感想
アメリカで行われている展覧会に出展されたエメラルドを盗み出すよう依頼された主人公たち。軽妙な会話やユーモアを交えながら計画が実行されていく。どことなく伊坂幸太郎の「陽気なギャング」シリーズを思い出させるが、小説の中で言及したこともあるくらいなので、勿論あちらがこの作品を意識していたのだろう。
シリアスで重厚な犯罪小説もいいが、こうやって軽口を叩き合いながらもプロフェッショナルに仕事に取り組む集団の話も楽しくていい。愉快で読んでいるうちに心が軽くなる。
彼らの最初の犯行からそうなのだが、ほとんど完璧に仕事をこなしているのに毎回運悪く何らかの問題が発生し、失敗に終わってしまう彼らのツイてなさが面白い。やれやれだぜと落ち込みながらも渋々と次の仕事に取り掛かる。こんなに何度も犯行を繰り返すとなると、その方法を考えるだけでも大変そうだが、毎回ユニークな犯行を提示してくる著者はすごい。最後は催眠術を持ち出してきたりして、ちょっと雑になる感じも可笑しかった。
そしてこんなに犯行を繰り返すとなると、どこかで裏切り者が出てくるのではないかと思ってしまうものだが、メンバーの誰もがそんな事は想像だにしておらず、チームのために働くのが当然だと考えているのも安心する。みんなどこか変なところのある愛すべきキャラクター達だ。凄腕なのにどこか抜けている彼らのようなチームには、そんなドロドロとした話は似合わない。仲良しであってほしい。シリーズ化されているので、どこかでそんな話も出てくるのかもしれないが。
これまでに何度か映画化されているようだが、確かに映画にしたら面白くなりそうだと思ってしまうような小説だ。その場合、今だと監督スティーブン・ソダーバーグ、主演ジョージ・クルーニーかな、いや監督ウェス・アンダーソンか?と考えたりして、それもまた楽しい。
著者
ドナルド・E・ウェストレイク
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