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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「キャラクター」 2021

キャラクター

★★☆☆☆

 

あらすじ

 画力はあるがキャラクターが描けない漫画家志望の男は、遭遇した殺人事件で目撃した犯人をモデルにした漫画でデビューを果たし、売れっ子となる。

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感想

 殺人事件に遭遇したことがきっかけでデビューし、売れっ子になった漫画家が主人公だ。勝手に人の家に上がり込まないだろうとか、たかがそんなことで面白い漫画が描けるようになるわけないだろうとか、ここまででもツッコミどころ満載だ。しかし、そこは許容範囲だということにしておかないと話が進まない。

 

 主人公が目撃するも逃亡した殺人犯はその後も犯行を重ね、一連の事件は、主人公が描く漫画の内容と奇妙なリンクを見せるようになる。これ自体は興味深いのだが、殺人犯が漫画を模倣しているのか、主人公が漫画で予言をしているのかが曖昧でモヤモヤしてしまう。それにもし犯人が模倣しているとするのなら、最初の犯行はどう捉えるべきなのだろうか。

 

 

 中盤は、この関連性に気付いた警察の人間も加わって物語は進行していく。だが、一体何をやっているのか、方向性が見えない宙ぶらりんな時間帯になっている。無駄に大げさな音楽が使われるところなども含めて、なんとなく「デスノート」を意識しているような雰囲気はあるが、別に誰も戦っていない。

 

 主人公や警察を犯人が挑発するわけでもなく、ただそれぞれが個別に好き勝手に行動しているだけだ。見どころが特にないまま続き、これ何の時間?とぼやきたくなる。唯一、主人公が犯人から接触される場面は緊張感が高まるが、脅迫されるでも危害を加えられるでもなく、ストーカー的行為に終始するだけだったのにはズッコケてしまった。

 

 強いて言うならこの時間帯は、犯人が凄惨な殺人を次々と行うシーンが見どころなのかもしれない。だが前振りもなくすぐに殺してしまうので、呆気にとられるだけだ。もうちょっと犯人に襲われる恐怖を感じるような描き方をして欲しかった。これでは「志村、後ろ―!」と叫ぶヒマもないというか、ドキドキを楽しむ時間がない。おかげで無駄に残忍なだけで、まったく怖くないシーンになってしまっている。

 

 さすがにクライマックスはちゃんと前振りがあり、映画らしくはなっているが、そもそもなぜ主人公が犯人と戦う必要があるのか見えないし、登場人物の動きが支離滅裂で、不条理劇でも見ているかのような気分になった。特に高畑充希演じる主人公の妻が、犯人を目の前にして逃げるでも戦うでもなく、間を持て余すくらいじっとしていたのは謎だった。まるで段取り通り刺されるのを忍耐強く待っているかのようで、失笑してしまった。

 

 この他にも、実写映画なのにページをめくって漫画を見せることで前振りにしてしまったり、すでに何度も犯人の異様な部屋を見せていたくせに事件後に今さらうわぁと驚いて見せたりと、不可解な演出が目立つ。しょうもないセリフばかりを割り当てられている中村獅童は不憫だった。

 

 小栗旬演じる刑事も無駄に死なされているが、どこかで見たことのあるシーンを詰め合わせだけ、といった趣のある映画だ。思わせぶりなシーンが続くがまとまりはなく、ちぐはぐな印象を受ける。主人公と犯人は表裏一体な関係だ、みたいなことを言いたかったのだろうが、とにかく浅い。

 

 いちいちツッコんでいるときりがないのでもう言及しないが、全体を通して警察の動きが酷かった。実は神奈川県警をディスることが本当の目的の映画だったのではないかと疑ってしまうレベルで、もしそうだったのなら大成功だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 永井聡

 

脚本/原案 長崎尚志

 

出演 菅田将暉/Fukase/高畑充希/中村獅童/小栗旬/中尾明慶/岡部たかし/小島聖/テイ龍進/小木茂光

 

音楽 小島裕規“Yaffle”

 

キャラクター

キャラクター (2021年の映画) - Wikipedia

 

 

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