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「空に住む」 2020

空に住む

★★★☆☆

 

あらすじ

 両親を交通事故で亡くしたばかりの女は、叔父夫婦が所有する高層マンションの部屋で暮らし始める。

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感想

 タワマンで暮らし始めた女が主人公だ。突然両親を失ったばかりというのに淡々とした様子なのが印象的だが、素直に現実を受け止め切れていないのだろう。引っ越してきた地上から遠く離れた高層マンションの一室は、そんな彼女の雲のようなフワフワとした心情を表わしているかのようだ。

 

 平然としているように見える彼女は、引っ越しの後さっそく風邪をひく。心のどこかでは誰かの助けを求めているのかもしれない。そんな彼女が、周囲の人たちとの関わりを通し変わっていく様子が描かれていく。

 

 主人公のまわりの人たちの中では、専業主婦の叔母が印象に残った。一見すると富裕層で心に余裕のある善い人、といった雰囲気ではある。だが主人公への絡み方がねっちりとしていて気色悪かった。嫌な感じだなとずっと気になっていたのだが、彼女の心の闇や、ついに一線を越えてくるところがちゃんと描かれていて安心した。

 

 

 でも現実世界では、決定的なヤバさをさらけ出すことなく、その一歩手前の状態をキープし続ける人もいるから厄介だ。めんどくさい人だなと思いながらも付き合い続けるしかない。

 

 それから、同じマンションに住み、主人公と関係を持つ人気芸能人の役は、もうちょっと分かりやすい男前にやらせればいいのにと思ってしまった。物語の鍵となる巨大看板もチープだ。人気スターのキラキラとした感じがなくて説得力がなかったが、どうやら大人の事情の配役のようなので仕方がない。

 

 どこかフワフワしていた主人公だったが、次第に現実にピントが合うようになっていく。彼女に力を与えてくれた人たちに、彼女も力を与えていることに心が動かされる。それぞれが少しずつ頑張って、互いに励まし合うことで勇気づけられ、成長していく。

 

 タワマンの一室でフワフワしていた主人公が、ラストでは地に足を着け、しなやかに体を伸ばして世界を見られる力を手に入れている。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 青山真治

 

脚本 池田千尋

 

原作 空に住む (講談社文庫)

 

出演 多部未華子/岸井ゆきの/美村里江/岩田剛典/鶴見辰吾/岩下尚史/髙橋洋/大森南朋/永瀬正敏

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音楽 長嶌寛幸

 

空に住む

空に住む

  • 多部未華子
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空に住む〜Living in your sky〜 - Wikipedia

 

 

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