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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ノーザン・ソウル」 2014

ノーザン・ソウル(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 1970年代、イングランド北部の退屈な片田舎に住む高校生は、ある日音楽好きの少年と仲良くなり、彼の好きな「ノーザン・ソウル」にどっぷりとハマってしまう。

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感想

 60年代後半からイングランド北部で盛り上がりを見せた「ノーザン・ソウル」ムーヴメントを題材にした物語だ。まず「ノーザン・ソウル」とは何なのだ?という話だが、明確な定義はなく、だいたいアップテンポで踊れるソウルミュージックのことを指すようだ。なおかつ皆が知らないレアな曲であればあるほど喜ばれたらしい。

 

 日本で言えば90年代の「渋谷系」みたいなものだろうか。またアメリカの音楽がイギリスの一部地域で熱狂的に支持されるようになった構図から見れば、最近世界的に評価されるようになった「シティ・ポップ」と類似点があるかもしれない。

 

 個人的にソウル・ミュージックは好きだが、ソウルフルに歌い上げる曲やしっとりした曲が好みなので、このアップテンポ一辺倒の「ノーザン・ソウル」はいまいちピンと来ない。たまにはスローテンポな曲も聞きたくならないのかと思ってしまう。だがドラッグでキメて踊りまくる主人公らを見ると、これはクラブ・カルチャーの文脈の中で生まれたムーブメントだからだと理解できる。

 

 主人公は、イギリスの片田舎の退屈な街の退屈な学校で、鬱々とした日々を過ごしていた。中でも彼の通う高校の教師の態度は酷かった。町でも地域でも国でもそうだが、駄目な場所では駄目な人間がなぜか偉そうにしているものだ。別に住んでいるわけでもないのに、見ているだけで早くこんなところから出て行かないと、と焦燥感に駆られてしまった。だから主人公がキレて颯爽と学校を出ていくシーンは、カタルシスがあった。

 

 「ノーザン・ソウル」を知ってどっぷりハマった主人公は、それを教えてくれた少年と親友となり、共に人気DJとなることを夢見て、アメリカにレアなレコードを探しに行く目標を立てる。昼は働き、夜はクラブで踊る日々を過ごしながら着実に準備を進めていく。

 

 

 だが次第に雲行きが怪しくなっていく。これは皆と共同で何かをやろうとする時に必ずぶつかってしまう問題だ。皆で立てた目標のプライオリティがそれぞれ違うことで生じる。主人公にとっては一番の目標だったが、親友にとってはドラッグや日々の楽しみの方が優先順位が上だった。さらには、二人の足並みがそろわない間に様々な事件が発生し、状況は悪化していく

 

 熱狂的なクラブの雰囲気と共に、主人公の恋愛や友情が描かれていく青春映画だ。ダンスにブルース・リーの動きを取り入れていることもあって、主人公が段々とブルース・リーぽく見えてくるのが面白い。それと同時に、ブルース・リーが世界に与えたインパクトの大きさも実感する。決定的に仲違いしてしまった親友と仲直りするために、ラストで主人公が取った行動にはグッと来た。だが今後もこんな風に仲間割れをくり返すのだろうなという予感はある。

 

 「ノーザン・ソウル」ムーブメントの中の様子がたっぷりと描かれるが、もうちょっと俯瞰的な視点も欲しかった。逆に当時、世間ではどんな音楽が流行していたのか、普通の人々は彼らをどう見ていたのかが気になってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 エレイン・コンスタンティン

 

出演 エリオット・ジェームズ・ラングリッジ/ジョシュ・ホワイトハウス/アントニア・トーマス/ジャック・ゴードン/ジェームズ・ランス/クリスチャン・マッケイ/リッキー・トムリンソン/リサ・スタンスフィールド/スティーブ・クーガン

 

ノーザン・ソウル(字幕版)

ノーザン・ソウル(字幕版)

  • エリオット・ジェームズ・ラングリッジ
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