★★★★☆
あらすじ
仕事の巻き添えで怪我をさせてしまった女性の治療費を稼ぐため、最後の仕事をすることにした殺し屋は、正義漢の刑事に追われるようになる。
チョウ・ユンファ主演、ジョン・ウー監督。原題は「喋血雙雄」、英題は「The Killer」。「男たちの挽歌」シリーズとは無関係。香港映画。111分。
感想
巻き添えで失明寸前の怪我をさせてしまった女性を助けようとする殺し屋の男が主人公だ。演じるチョウ・ユンファの男前度がかなり高い。「男たちの挽歌」シリーズもそうだが、彼が映画の中で高確率で見せがちなダサい部分が全くなく、純粋にカッコいい。
最後のつもりで行った殺しの仕事で、主人公は刑事と仕事を依頼したマフィアに追われることになってしまう。まず主人公は、エージェントに裏切られたことに気付く。この時だけチョウ・ユンファが男前に撮られていないが、友人でもあった彼と対立する苦悩を表していたのだろう。悲しみを抱えながらの対決には切ないものがあった。
だが、ここからエージェントが見せる男気はグッと来る。一度は裏切ってしまった主人公との約束を守るため、命がけでマフィアのボスから金を取り戻そうとする。不利な状況でボロボロになりながらも、それでもあきらめることのない姿は、覚悟を決めた男の凄みがあった。最後に、友である主人公のセリフを借用しているのも良い。
また、主人公を追う刑事の相棒も男気を見せる。尾行中に銃撃され、血まみれになりながらも主人公の居場所を探し、刑事に後を託す。
そして主人公と刑事の対決になっていくのかと思いきや、襲い来るマフィアに備え、共闘する展開となった。それまでに何度かあった小競り合いですでに予感のようなものはあったが、激しい銃撃戦の中で二人が互いに心を通わせていく様子がありありと伝わってくる。
冒頭と同じ教会で、敵対していた二人ががっちりと手を組み、マフィアたちを迎え撃つクライマックスは熱い。互いに背中を預けて銃を撃ちまくり、マリア像が撃ち砕かれ、白いハトが舞う。激しいバイオレンスながらもどこか詩的だ。決死の覚悟で教会から飛び出す直前に、芽生えた友情を確かめ合うように二人が言葉を交わすシーンは胸が熱くなる。
主人公に共鳴するように、刑事をはじめとする男たちの仁義が炸裂する物語だ。夜の香港の街を映し出す映像は美しく、ガンアクションもスタイリッシュで、どこかファンタジー感すら漂う熱く激しいアクション映画に仕上がっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ジョン・ウー
製作 ツイ・ハーク/クラウディ・チョン
出演 チョウ・ユンファ/ダニー・リー/サリー・イップ/チュウ・コン/ケネス・ツァン/シン・フイオン
撮影 アーサー・ウォン/ピーター・パウ

