★★★★☆
あらすじ
リストラされた上司から渡されたデータを解析し、自社の危機的状況に気付いた大手投資銀行の若手社員は、早速上司に報告する。
2007年から兆候を見せていたリーマンショックを題材にした作品。ケヴィン・スペイシー、ジェレミー・アイアンズ、デミ・ムーアら出演。109分。
感想
大手投資銀行の長い一日が描かれる。始まりは、突然乗り込んできたリストラ担当者による大量解雇だ。対象者は呼び出されてクビを宣告され、そのまま会社を立ち去るように命じられる。アメリカは非情だ。
クビを免れた社員たちは、安堵しつつも「ライバルが減って出世のチャンスだ」と上司にハッパをかけられる。この辺りの割り切りぶりもアメリカらしい。リストラが日常の光景となって、もはやいつ誰に何を言うべきかの慣例が出来上がっているのかもしれない。様式美みたいなものだろうか。
そんな中、ある若手社員はリストラされて立ち去る上司からデータを渡される。私物以外は何も持ち去るなと厳命され、監視役までついていたのに、データの入っていたUSBメモリを持ち出せそうだったのは意外だった。案外と緩い。
そして若手社員は、解析したデータが会社の危機的状況を示していることに気付く。定刻を過ぎて帰路についていた上司を呼び戻し、そこからさらに上の人間が次々と呼びだされる。深夜に続々と幹部たちが集結し、緊張感が高まっていく。危機の内容は正直、最初はよく分からなかったのだが、上司からその上司へと何度も説明するのを聞いているうちになんとなく飲み込めてきた。
会社存亡の危機についにトップもやってきて、真夜中に対応策が話し合われる。下っ端の若手社員が、会社組織の各階層にいる人々を下から順に見ていくことになる巧みな構成だ。経済危機への対応だけでなく、金融業界にいる人々の生態も観察することができる。
社員のリストラよりも危篤の愛犬に涙する男や、高級車を乗り回し、稼いだ金を派手に使う男、清掃員を空気のような存在と見なし、隣にいるのに無視して機密情報を話し合う上役たちなど、彼らの人間性や考え方が随所に滲み出ている
上層部が徹夜で出した解決策は、取引先を裏切るような不道徳な方法だった。だがそれを末端の社員に正直に説明し、すごい額の報酬を用意した上でやらせるのはちゃんとしているなと感心した。日本だと「気合いだ、頑張れ」の精神論や、やりがい搾取や泣き落としで誤魔化してしまいそうだ。そして社員も唯々諾々と従ってしまうのだろう。アメリカのように、労働なんて単なる契約で、賃金に見合った仕事しかしないとお互いに思っている方が、後腐れはなさそうだ。
倫理的には問題だが、自分たちがやらなければ他の誰かがやるだけなので、だったら自分たちがやる、と開き直る彼らは、面の皮が厚いようにも見えるが、真理だ。良心が咎めて退場したところで後釜が来るだけで何も変わらない。
資本主義は、誰か一人が倒れたら終わってしまうようなものではなく、次から次へと代わりとなる者が現れるシステムだ。ちょっとやそっとでは崩壊しない盤石さがあるが、それだけに間違った方向に進んでしまっても簡単には正せない恐ろしさもある。どこから攻めればいいのかすらわからない、実体の見えない怪物みたいなものだ。
派手さはないが、静かにスリリングに展開する硬派な経済ドラマだ。生き馬の目を抜く世界で生き残り続ける人々のぎりぎりのドラマを堪能できる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 J・C・チャンダー
製作/出演 ザカリー・クイント
出演 ケヴィン・スペイシー/ポール・ベタニー/ジェレミー・アイアンズ/ペン・バッジリー/サイモン・ベイカー/メアリー・マクドネル/デミ・ムーア/スタンリー・トゥッチ/アーシフ・マンドヴィ
