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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ファミリア」 2023

ファミリア

★★☆☆☆

 

あらすじ

 結婚後初めて帰省した息子夫婦と共にゆっくり過ごしていた陶器職人は、何者かから逃げてきた在日ブラジル人を匿う。

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 役所広司主演、吉沢亮、佐藤浩市ら出演。成島出監督。121分。

 

感想

 一人暮らしの陶器職人と、近所に住む在日ブラジル人たちとの関係を描いた物語だ。両者の関係は、トラブルに巻き込まれたブラジル人を主人公が匿ったことで始まった。ただその関係は、懐いてきたブラジル人を拒まない程度の希薄なものだ。主人公はリアクションするだけで、彼からアクションを起こすことはない。

 

 ブラジル人は、仲間が半グレから金を盗んだことで脅されていた。ただ、盗み自体には関与していないようだったので、脅されても拒否すればいいだけのように思えた。外国人に対する差別や偏見もテーマになっているが、このブラジル人をひとくくりに見るような雑な設定自体が差別的では?という気がしないではない。

 

 

 彼らが半グレの脅しに応じてしまうのがよく分からず、絶望して逃げたり死んだりしようとする前に、警察に行けばいいのに、と思ってしまった。途中で強制送還を恐れていたが、最初の段階で断っていれば問題なかったはずで、そうでないならそうでない理由を示すべきだった。ブラジル人たちも品行方正ではなさそうだったので、なんらかの弱みを握られていたのかもしれない。

 

 彼らを追い詰める半グレのリーダーは、ブラジル人たちを憎んでおり、それには理由があることも示される。映画に深みを与えようとしているのだろうが、逆に浅い。ブラジルへ行ったときに様々なブラジル人に出会ったはずだし、悲惨な事件からもかなりの月日が流れているはずだ。それなのにいつまでデカい主語で語っているのだと呆れてしまう。そんなのでよくリーダーが務まるなと思ってしまった。

 

 どうせ彼のことをじっくりと描く余裕などないのだから、理由なくブラジル人を差別するキャラで良かったような気がする。半グレのリーダーでなくヤクザの落ちこぼれで、ボスにされた酷い仕打ちを真似してブラジル人に同じことをするような男の方が、色々と炙り出せたはずだ。差別や偏見は理由がないからたちが悪い。

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 ブラジル人たちは追いつめられ、やがて主人公は彼らのために動く。いわゆる「グラン・トリノ」的な展開だが、それまで主人公が受け身だっただけに全然しっくりこなかった。せめて彼らに対してもどかしさを勝手に感じている様子ぐらいは見せて欲しかった。この他にも息子の件など色々あるが、どれも描き足りない映画だ。主人公は、息子の件がなければブラジル人を助けることはなかったのだろうなと思ってしまう。

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 外国人が大勢住む団地に、夜のお店で働いていた女たちが帰って来て、入れ替わりで男たちが工場かどこかへ出かけていく朝の光景を描いた冒頭のシーンは、なかなか印象的で期待したが、その後は残念な展開だった。夢がないと語るブラジル人に説教する息子や、急に大金をかき集めて首相官邸に乗り込む主人公など、不可解なシーンも多かった。

 

スタッフ/キャスト

監督 成島出

 

脚本 いながききよたか

 

出演

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吉沢亮/サガエルカス/ワケドファジレ/松重豊/MIYAVI/中原丈雄/室井滋

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音楽 安川午朗

 

ファミリア

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  • 役所広司
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ファミリア (映画) - Wikipedia

 

 

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