★★★☆☆
あらすじ
山奥でトリュフを獲ってひっそりと暮らしていた元シェフの男は、ペットの豚を何者かに奪われ、取り戻すために町に向かう。92分。
感想
トリュフ狩りにも使っていたペットの豚を強奪されてしまった男が主人公だ。電気も電話もないような山奥で暮らす変わり者だが、豚を追ってかつて暮らした街に戻ってくる。
この流れだと当然、犯人を追い詰めて倒す復讐劇になっていくのかと思ってしまうが、主人公は慎み深い。殴るのではなく殴らせて、罵倒するのではなく助言して、奪うのではなく料理を与えることで犯人に近づき、豚を取り戻そうとする。まるで復讐の虚しさを知っているかのようだ。
その過程で、主人公がかつては一流のシェフだったことが分かってくる。道理で章立ての各タイトルが料理名になっているのかと合点がいった。料理シーンも美味しそうで、もっと見ていたかったくらいだ。
そんな中で、彼の後釜として一流レストランのシェフにおさまっていた男に対し、主人公が厳しいながらも愛のあるアドバイスをするシーンは印象的だった。やりたいことが分かっているなんて滅多にないことなのだから、やらない手はない。グッとくる言葉だ。その言葉を聞いて、彼は犯人の手がかりを教えてくれた。
犯人を捜す過程で主人公の過去も、ぼんやりとだが明らかになっていく。彼の怒りを抑えた行動は、この時の経験が影響しているのだろう。すべてが終わると、ずっと気になっていた血まみれの顔を洗い、元の生活に戻っていった。いつまでもこだわっているわけにはいかない。クラシック音楽が古びないように、時代が変わっても変わることのない真理を、主人公は知っているかのようだった
物静かに進行する物語だ。深い余韻に浸れる。だが、この映画を評価する声があることを知って見始めたので、自分の中でハードルを上げ過ぎてしまっていた気がしないでもない。
タランティーノ、ニコラス・ケイジの『PIG/ピッグ』を「過去5年でベスト」と大絶賛 | THE RIVER
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案/製作総指揮 マイケル・サルノスキ
製作/出演 ニコラス・ケイジ
出演 アレックス・ウルフ/アダム・アーキン