★★★☆☆
あらすじ
保釈金を踏み倒して逃げる被告を捕える仕事で生計を立てる男は、ピンクのキャデラックで逃げた女性を捕まえるよう依頼される。
感想
この映画は、主演のクリント・イーストウッドが様々な扮装を披露しているのが見どころの一つと言えるだろう。冒頭からハイテンションなキャラになり切っていて意表を突かれてしまった。その他にも金ピカのジャケットを着た陽気なおじさんに扮してみたりと、マッチョなイメージがある彼だが、案外こういうことも好きなのかもしれない。ノリノリな雰囲気が伝わってくる。
賞金稼ぎの男が、捕らえた逃亡犯の女性に情けをかけたことから始まる物語。このヒロインの女性は夫の身代わりで捕まり、愛想をつかして逃げ出したのだが、この夫がなかなか酷い。白人至上主義者で妻も子供も省みず、仲間とつるんでいる。グループの金を持ち逃げした妻を追うことになるのだが、捕まえたら仲間が報復として暴行すると宣言しているのにへらへら笑っているだけだ。
自分の妻とはいえもう気持ちがないのかもしれないので、百歩譲ってそれは分かるとしても、二人の間に生まれたまだ赤ん坊の子供を人質に取り、妻を脅すのはさすがに鬼畜過ぎだ。万が一の時は我が子に手をかけることになる。グループ内での弱い立場的に従うしかなかった面はあるのだろうが、それならせめて苦悩するシーンぐらいは作って欲しかった。人の心がないのかと思ってしまう。
そして夫がそんな男だからか、人妻だろうと気にすることなくヒロインをものにしてしまう主人公もなかなかだ。でもこれはクリント・イーストウッドらしいと言えばらしい。彼の映画ではお約束のような展開なので、思わず笑ってしまった。ここでも寝取られた夫がただ指をくわえて見守るだけなのは解せなかったが。
白人至上主義者らは山中に基地を作り、武装して訓練を行っている。アメリカもなかなか闇が深い。武力を持たないから舐められるとか言っていたら、最終的にこうなるのは目に見えているわけだが。
そんな彼らが同じ白人に対して暴れていたのは皮肉だった。結局彼らの主義主張などは単なる名目に過ぎず、ただ日ごろのストレスを晴らしたいだけなのがよく分かる。日本でも、つらい日常で溜まったフラストレーションを発散するために、SNSで同様のことをしている人たちはたくさんいる。
山中での訓練所で誰かが射撃の的になって度胸試しをするくだりが二回あったので、これはオチに使われる前振りなのだろうなと思っていたのに、何もなく終わってしまったのには拍子抜けした。それにせっかくピンク・キャデラックに乗っているのだから、もっとロードムービーぽくして欲しかった。
物足りなさは残るが、まずまず楽しめる映画に仕上がっている。
スタッフ/キャスト
監督 バディ・バン・ホーン
出演
バーナデット・ピーターズ/ジェフリー・ルイス/ウィリアム・ヒッキー/フランシス・フィッシャー/ジェームズ・クロムウェル/ジム・キャリー
音楽 スティーヴ・ドーフ
撮影 ジャック・N・グリーン