★★★☆☆
あらすじ
白人と現地メキシコ系農民の土地所有権をめぐる争いに巻き込まれてしまった男。原題は「Joe Kidd」。
感想
白人とメキシコ系農民の抗争が描かれる。主人公は、最初は白人側につくもあまりの非道ぶりに加勢したのを後悔し、最終的には農民たちのために戦う。なかなかの熱い展開なのだが、物語自体は淡々としたペースで進んでしまう。
それは主人公が無口で感情の起伏があまりないせいだ。そのために劇的にならない。ただ主人公がクールなら、その周りの人間が感情豊かに盛り上げればいいのだが、白人側はいつもへらへらしているし、農民側は主人公と同じように無口で無表情だ。だから映画の振り幅は小さいままで、こちらの気持ちのギアも上がっていかない。
この映画では結構簡単に人を殺してしまって人命がかなり軽い。これは白人たちの非道ぶりを表しているともいえるが、意外と主人公もあっさりと敵を殺してしまうので、当時の感覚としては違和感がないのかもしれない。また、カウボーイたちのこの時代は、そういう時代だったという事でもあるのだろう。
そして白人たちが人質にとった農民たちを殺そうとする時の、農民たちの無抵抗ぶりにも驚いた。命乞いするでも暴れるでもなく、あきらめて神に祈るだけ。虐げられることに慣れてしまうと、過酷な状況でも素直に受け入れてしまうようになるという事か。
それから主演のクリント・イーストウッドが当然のようにモテキャラなのが、なんだか可笑しかった。出会って数秒で相手とキスしてしまうし、なんなら数秒目が合っただけで落としたことになっている。この時代の彼の映画はこんな感じが多いが、気に入った女は力ずく手に入れるとか、気に入らないやつは問答無用で殴りつけるとか、典型的なマチズモなキャラクターだ。映画の中だから気にならないが、今だと受け付けない人がいるかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督
脚本 エルモア・レナード
出演
ロバート・デュヴァル/ジョン・サクソン/グレゴリー・ウォルコット
音楽 ラロ・シフリン