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「パニッシャー」 2004

パニッシャー (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 息子が死んだ恨みを買って一族を皆殺しにされてしまった潜入捜査官の男は、復讐を誓う。マーベル・コミックのキャラクターをベースにした映画。

 

感想

 「パニッシャー」は、復讐ではなく処刑をするヒーローだが、この映画ではその始まりとなった自身の復讐の様子が描かれる。正しい行動が恨みを買い、家族を殺されてしまった主人公が復讐に立ち上がるというオーソドックスな、清く正しい復讐劇だ。

 

 ただし映画はそんな素振りを微塵も感じさせず、まずは大きな仕事を終えて妻や子供らと余暇を過ごす、リラックスした主人公の姿がゆったりとしたテンポで描かれていく。でもその後に何が起きるかは明らかで、バレバレだ。だからすでにこの時点からその後の悲劇を想像し、暗く重苦しい気分になってしまっていた。

 

 ここをしっかり描いたのは、幸福の絶頂から悲しみのどん底へ突き落される落差によって劇的な印象を与えたかったからなのだろうが、それは突然起きるから効果的なのであって、展開が読める場面では何の意味もない。この状況ではだらだらと描かれても辛くしんどいだけなので、さらっと描いて本題に入って欲しかった。

 

 

 家族を殺されるも九死に一生を得た主人公は、法に頼ることをあきらめ自ら復讐に乗り出す。ただし、ここで主人公がヒーローに生まれ変わったというような劇的な変化はない。シリアスな顔をした普通のおじさん、という印象だ。特徴と言えばドクロのTシャツを着ているだけ、という地味さで、これがまた逆におじさんぽさを強調してしまっている。特殊能力があるわけでもなく、ちょっと加工した車に乗っている程度なので、あまりカッコ良さは感じず、ヒーローらしさは薄めだ。

 

 元々潜入捜査官として能力が高かった主人公は、次々と復讐相手を倒していく。単純に力で敵を倒す以外に、策略を用いて敵のボスが自ら愛する者たちを殺すように仕向けて行くのが面白い。

 

 その中で主人公が、車を移動させる時にわざわざ消火栓を置いたりどけたりするのが謎だったが、もしかしたらそのスペースに他の車が勝手に停めないための対策だったのかもしれない(消火栓の付近は駐車禁止?)。でもそれに思い当たった時は、あまりの細かさに思わず吹き出してしまった。

 

 そんなみみっちい描写をわざわざしなくてもいいのにと思ってしまうが、必要だったのだろうか?謎のこだわりだ。正義のヒーローらしくない。そもそも正々堂々と戦うのではなく、策略を使っている時点でセコさを感じてしまうが。

 

 一方で主人公は、彼を気遣うアパートの隣人たちと次第に交流を持つようになる。悲壮感が漂うシリアスな展開を中和するための、ハート・ウォーミングなパートと言ったところだが、正直あまりこの隣人たちに好感が持てなかった。特に若い女性が妻が死んで間もない主人公に色目を使ったのが信じられない。駄目ではないのだろうが、デリカシーがなさ過ぎる。それに復讐譚の途中に新しい恋は必要ないだろう。

 

 その他の隣人もどこか風変わりな人間ばかりだ。少し変だけど親近感が持てるいい奴ら、としたかったのだろうが、残念ながら変わってるからあまり関わりたくないと思わせるようなキャラクターばかりだった。

 

 クライマックスは画面全体が炎に包まれるような映像で良かったが、全体的にはいまいち盛り上がりが感じられなかった。オーソドックスな物語が一定のゆったりとしたテンポで描かれ、良く言えばクラシックな趣があるとも、悪く言えばかったるいとも言えるような映画だ。それにどちらかというとベタな復讐劇ではなく、その後の正義のヒーローとして活躍する「パニッシャー」の姿を見たかったというのもあって、物足りなさがある。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ジョナサン・ヘンズリー

 

原作 Punisher: Year One (Punisher: Year One (1994-1995)) (English Edition)



出演 トーマス・ジェーン/ジョン・トラボルタ/ウィル・パットン/ロイ・シャイダー/ローラ・ハリング/ベン・フォスター/レベッカ・ローミン=ステイモス/サマンサ・マシス/マーカス・ジョーンズ

 

パニッシャー (2004年の映画) - Wikipedia

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