★★★☆☆
あらすじ
大学で教鞭をとる映画監督の男は、町で見かけた一人の女子高生に惹きつけられる。
感想
人生の終わりを意識し始めた初老の男の物語だ。とはいえ、若い愛人と共に暮らす主人公の様子は、この世代の男として見れば全然枯れておらず、恵まれていると言える。だがそういう男だからこそ、人生の終わり、男としての終わり、ということを強く意識してしまうのかもしれない。
大学での授業の様子や愛人との同棲生活などの主人公の日常生活と、彼が書く映画のシナリオの内容が入り混じって描かれていく。どこまでが現実でどこからがシナリオの世界なのかが曖昧で、幻想的な雰囲気だ。色事的な話が多いが、男の頭の中なんて中学生から老人まで、だいたいこんなものかもしれない。
そんな中で夢か現実なのか、主人公が惹かれる女子高生がスタジオでダンスをするシーンが何度かあるのだが、その時の彼女の衣装がすごい。それってどういう類のダンスなの?とめちゃくちゃ気になってしまった。無駄にセクシーだ。
それから主人公が大学で映画を教えていることから、学生たちが「雨に唄えば」の名シーンを再現する場面がある。今まで何度もそのパロディを見たことがあるようなベタなシーンで、最初は寒いかなと思っていたのだが、見ているうちになんだかんだで良いな、と思ってしまっている自分がいた。映画のマジックを感じる。あれはまさしく映画史に残る不朽の名シーンなのだなと、妙に納得してしまった。
主人公が人生の黄昏時を迎えつつあることを受け入れ、あらゆることに区切りをつけて、最後のひと仕事を、と覚悟を決めたところで、突然物語は終わりを迎える。
だが案外彼は良い所で終わりを迎えることが出来たのかもしれない。たとえ最後のその仕事を完遂したとしても、しばらくすればまた「これが最後」と言いながら新たな事を始めてしまうような気がする。女性についても同じで、また別の女性を追いかけるのだろう。そしてそれを死ぬまで繰り返す。男はきっとあきらめの悪い生き物だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 高橋伴明
製作/出演 高橋惠子
出演 奥田瑛二/不二子/水上竜士/柄本佑
音楽 安川午朗
撮影 小川真司
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