★★★★☆
あらすじ
活動を禁止され、しがない会社員生活を送っていた元スーパーヒーローの男は、謎の組織に活動再開を打診される。
アカデミー賞長編アニメ映画賞、アカデミー賞音響編集賞。
感想
序盤は若干CGのチープさが気になった。まずヒーローが活躍していた古き良き時代が描かれるので、敢えてレトロな雰囲気にしていたところもあるのだが、なんとなくのっぺりとした昔のゲームみたいな映像になっていた。20年も前の映画なのだから当然か。だが次第に慣れて気にならなくなる。
器物損壊や救助者のケガなど、負の側面が大衆に毛嫌いされるようになり、ヒーローの活動が禁止されてしまった世知辛い世界が舞台だ。元スーパーヒーローの主人公は、かつてのように活躍できないことに気を落としながらも、家族のために保険会社で働いている。
ヒーローが派手に戦って甚大な被害が出てしまうのは、スーパーヒーローものを見てると必ず感じる欺瞞だが、子供向け映画でもちゃんとその問題に向き合おうとするのだなと感心した。勧善懲悪が基本のヒーロー映画だが、こういうテーマに取り組むようになったことでリアリティが増し、深みが感じられるようになってきた。
またこの映画では、自分の能力を十分に発揮できない社会に暮らす者の苦悩を描いているともいえ、社会問題とリンクして共感を呼びやすい。様々な属性の人々をヒーローにすることで、世の中の諸問題を描くこともできる。こういった特徴が現在のヒーロー映画ブームを生んだのだろう。
主人公は、怪しい組織の勧誘に乗ってヒーロー活動を再開するも窮地に陥ってしまう。それに勘付いた同じく能力者である妻や子供たちが駆け付け、共に戦うストーリーだ。敵のアジトが孤島にある巨大で近未来的な施設だったり、主人公らがこっそりと侵入する感じだったり、ムードたっぷりの音楽だったりで、初期の「007」ぽさがあった。スーパーヒーロー映画というよりもスパイ映画のようなテイストだ。レトロでクラシックな雰囲気で、これがなかなか魅力的だった。
そして主人公一家は、足が速い、透明になれるなど、メンバーそれぞれが違う能力を持っており、こちらは「サイボーグ009」ぽい。皆がバラエティに富んだアクションを見せるので面白かった。なかでも母親の、バーバママか!とツッコみたくなるような自由自在な変身ぶりは見ているだけで楽しかった。
クライマックスの戦いの後にももうひと山用意されており、最後の最後まで充実した内容のストーリーだ。マントの伏線も効果的に使われていて、かなり満足度が高い映画となっている。CGアニメだと役者やロケ地の諸事情などを気にしなくていいので、作り手が存分に力を発揮しやすいのかもしれないなと思ったりした。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ブラッド・バード
製作/出演(声) ジョン・ウォーカー
製作総指揮 ジョン・ラセター
出演(声) クレイグ・T・ネルソン/ホリー・ハンター/ジェイソン・リー/ブラッド・バード/エリザベス・ペーニャ/ウォーレス・ショーン/ジョン・ラッツェンバーガー/マーク・アンドリュース/フランク・トーマス/オリー・ジョンストン
音楽 マイケル・ジアッキーノ
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