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「セールスマン」 2016

セールスマン(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 引っ越ししたばかりのアパートで妻が何者かに襲われ、犯人を探す夫。イラン・フランス映画。

 

感想

 引っ越ししたばかりの部屋で妻が襲われてしまった主人公。事件に至るまでの過程がとても自然で見事なプロット。いくつかの偶然が重なって起きてしまった事件で、妻が迂闊だったと悔いるのも理解できるし、主人公が何でそんな事件が起きてしまったのだろうと訝しがるのも理解できる。不運としか言いようのない事件となっている。

 

 しかし、被害者となってしまった妻は頑なに警察に訴えようとしない。これは何処の国でもそうだが、犯人が捕まって裁判が始まれば、被害者なのに女性はつらい目に遭う可能性が高いからだろう。さらには女性の立場が弱いという中東ならではの事情もあるはずだ。近所の人もそうだし、夫である主人公ですらも、どこか彼女に対する態度に冷淡なものがある。しかし、それらを恐れて被害届を出さないのに、それによってさらに夫に疑惑の目で見られるのは悲しすぎる。

 

 

 そして、もうそっとしておいて欲しい妻と犯人への復讐を考える主人公との間に溝が生じ始める。妻が、これは本人の問題で、本人が納得しているなら他人が口出しするべきではない、と考えるのも分かるし、主人公が彼女だけの問題ではなく夫婦の問題だろう、と考えるのもよく分かる。難しい問題だ。ずっと夫婦は一心同体という気でいたのに、これは個人の問題だからあなたは関係ないと突然言われたら戸惑うだろう。ただ、主人公が妙に世間体や名誉を気にしているのが見て取れて、そこに違和感を感じなくもないのだが、これもまた地域柄なのだろう。

 

 やがて、ついに犯人を見つけ、復讐を果たそうとする主人公。しかし妻の言葉や思わぬ事態によって、なんとも言えない結末を迎える事になる。犯人が憎くても、罪のないその家族を見てしまうと復讐の気分が削がれてしまうというのは分かる。それに報復の連鎖を止めるという意味でも、復讐しないことが正しいのだろう。でもだからと言って、あんな酷いことをしたのに何の罰も受けず、犯人がのうのうと生きて行くのも許せない。個人間であれ、国家間であれ、不毛だと分かっていても報復の連鎖が止まらないのは、この感情を抑えることが出来ないからだろう。分かっているのに止められないのだから、簡単に解決するはずがない。

 

 そんな映画の中でよく考えると一番怖いのは、そんな事をしそうもない普通の男が犯人だったということだ。主人公もさほど驚いているようには見えなかった。もしかしたらこの社会の人々は、心の中にとんでもなく抑圧された部分があり、誰だって何かのはずみで犯罪を起こしてしまう状態にあるのではないかと思ったりした。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 アスガル・ファルハーディー

 

出演 シャハブ・ホセイニ/タラネ・アリドゥスティ/ババク・カリミ

 

セールスマン(字幕版)

セールスマン(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/10
  • メディア: Prime Video
 

セールスマン (2016年の映画) - Wikipedia

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登場する作品

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