★★★☆☆
あらすじ
新しく雇ったカンフーが得意な助手と共に、様々な事件を解決していく私立探偵。
香港映画。100分。
感想
様々なパロディやギャグを織り交ぜながら繰り広げられるコメディ映画だ。古い映画なので今だとそこそこ笑えるといった程度だが、まずまず楽しめる。
意外だったのが演出のレベルがかなり高いことだ。冒頭では足元を映し続けるだけで笑いを取ったり、上手いつなぎで効果的な編集をしていたり、冗長なだけのセリフはカットしたりと、色々と工夫が見られて感心した。主演のマイケル・ホイは、監督としての技量もかなりありそうだ。
主人公らがいくつかの探偵仕事をこなしつつ、最後は大規模な犯罪集団と対峙する。この犯罪集団のやっていることがなかなかすごい。街を歩いている人を裏に連れて行って身ぐるみを剥ぐ。いわゆる追いはぎだが、この時代はまだこんな野蛮な感じだったのかと驚いてしまった。
古い日本映画で当時の人々の荒々しさを見るたびに、昭和はワイルドだ、と思わされていたが、日本だけでなく世界的にワイルドだったのだなと思い知らされた。ここ50年ほどで、急速に人類の自己家畜化が進んだのかもしれない。そうは言っても今だにこんな事が起きる国はまだあるとは思うが。
クライマックスも、犯罪者たちが映画館を占拠し、観客1人ずつから所持品を奪っていく原始的なものだ。のどかと言えばのどかだが、人間クサさがリアルで恐ろしくもあった。この時の満員の観客席のザワザワ具合は臨場感があり、迫力がある。こんな熱気も今ではあまり見ることがなくなってしまった。この一連の場面は盛り上がりがあり、オチも決まっていて面白かった。
散々スラップスティックなことをやっておいて、最後は物悲しいような哀愁漂うシーンで映画を締めくくるのも、しみじみとした味わいがあって良かった。コメディなのに脚本がしっかりしているので、ストレスなく見ることが出来る。
今回は字幕で見たが、吹替版を少し見てみたら、往年の広川太一郎節がやっぱり面白かった。ミスター・ブーと言えばこれだろう、と懐かしくなる。また二人の助手役の声優がツービート(北野武・ビートきよし)だったとは知らなかった。こちらは字幕で見た後だと違和感があったが、吹替は吹替でまた別の魅力があってアリだなと実感させられた。深夜にテレビでやってくれたりすると最高なのだが。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/出演 マイケル・ホイ
製作 レイモンド・チョウ
出演 リッキー・ホイ/シー・キエン/リチャード・ン
音楽/出演 サミュエル・ホイ
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1990年のセルフリメイク作品