★★★☆☆
内容
資本主義の限界が囁かれる現代。社会をアップデートするために新たなシステムを導入するのではなく、既存の資本主義に倫理を統合することを提唱する。
感想
資本主義に倫理を組み込むなんてできるのかと思ってしまうが、ここ百年ほどで男女平等になったり、人種差別がなくなったりと世の中の道徳はアップデートしている。男女平等が当たり前になったように、道徳的進歩によって倫理資本主義が当たり前となる時代が来てもおかしくない。そう言われると、確かにそうかもと思えてくる。
また、そもそも資本主義に対する誤解があるとも指摘している。社会では単一のシステムではなく、いくつものシステムが複合的に稼働しており、資本主義はその中のひとつに過ぎない。何もかもを自由市場で売買しているわけでなく、それ以外の領域でやりとりしているものも多い。現代に奴隷がいないのもそのためだ。
人間はもともと倫理的な性質を持つ生物なのだから、倫理的な企業に好意を持ち、率先してその製品を買うことで、彼らが儲かるようになる倫理資本主義社会は実現可能だと著者は主張する。その説明には一定の説得力がある。
ただ現実問題として、戦争や虐殺をする国の製品を気にせず買う人は多いし、安さだけを重視する人も多い。そこには貧困の影響があるのかもしれないが、人々の意識を変え、社会をアップデートするための道のりはかなり険しいように思える。
貧困は人々を絶望的状況に陥れ、帝国主義者、植民地主義者、そして偽りの希望をばらまくことで甘い汁を吸う悪人たちに搾取されやすくする。だから私たちは貧困を克服する方法を模索する必要がある。
p110
それに今でも男女差別や人種差別は根強く残っている。むしろバックラッシュでひどくなっている印象すら受ける。ブラック企業も人身売買もある。資本主義の舵を取る政治家にまず倫理がなく、ポピュリズムに走っているのも問題だろう。
「右派ポピュリズム」を刺激する自民党がはらむ、「あまりにも大きな危険性」…そもそも在留外国人を増やしたのは安倍政権(菊池 正史) | 現代新書 | 講談社
言っていることには頷けるが、実現させるとなるとどうだろう?と思ってしまわなくもない話ではある。だがそれでも目指すべき道を考えることは大切だ。それが頭の片隅にあるだけでも、世界との向き合い方は変わってくる。それは少しずつ世界を変えていくはずだ。
ある日突然全てが変わるのではなく、いつのまにかそんな社会になっていたと気づく未来もあるのかもしれない。そう考えるだけで少し明るい気分になれる。
著者
マルクス・ガブリエル
監修 斎藤幸平
訳 土方奈美
