★★★★☆
内容
知っておくべき現代の哲学者10人を紹介する。
紹介されるのはマルクス・ガブリエル、ジャック・デリダ、ニック・ランド、フリードリヒ・キットラー、リチャード・ローティ、ジル・ドゥルーズ、ダニエル・デネット、クァンタン・メイヤスー、スラヴォイ・ジジェク、吉本隆明。
感想
名前くらいは知っていた人から全然知らなかった人まで、現代の哲学者10人が紹介される。彼らの思想が分かりやすく簡潔に説明されているのでとても読みやすい。ひとまずどんな人なのかの概要を知るには良い本だ。
個人的には一番最初に紹介されるマルクス・ガブリエルの思想が興味深かった。科学で説明できないものも含めてすべてが存在するという彼の主張には深く肯いてしまう。
ネットのおかげで、幽霊からスピリチュアル、陰謀論に差別や偏見まで、様々な言説を信じる人々が想像以上にたくさんいることが可視化された。バカげたことを言っていると一笑に付すこともできるが、実際はどうあれ、彼らにとってそれは存在するものなのだから、まずはそれを尊重すべきなのでは?と最近思うようになった。
神様を信じている人に、神なんていないよと馬鹿にした態度で接すれば怒りを買うのと同じで、分かり合おうとするにはまずその態度を改める必要がある。
それからトランプ大統領を熱烈に支持したイーロン・マスクなど、ニュースで見かけるテック右派と呼ばれる人たちの考えがよく分からないところがあったが、ニック・ランドの加速主義を知ることで腑に落ちた。
イーロン・マスクやザッカーバーグはなぜ「総合格闘技」を習うのか?米テック右派の思想的な背景 | ニュースな本 | ダイヤモンド・オンライン
格差が広がろうが人が死のうが進歩を止めるな、というのは、確かに大金持ちで技術の最先端にいるなら言いたくなりそうなことかもしれない。貧しく死んでいく側でそれに賛同している人の気持ちは相変わらずよく分からないままだが。
そういった世界の動きの背景にどんな思想があるのかも見えてくる興味深い本だ。相反する二つの思想のどちらにも肯いてしまうこともあって面白い。
駆け足で10人が紹介されていくので、どれが誰の思想だったか混乱してしまうところはあるが、そこはそれぞれに関する本を読むことで解像度を上げていきたい。
著者
岡本裕一朗
登場する作品
「言語論的展開( The Linguistic Turn: Essays in Philosophical Method)」
ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として (ちくま新書 852)
