★★★☆☆
あらすじ
ドラッグを横取りされてその行方を追っている男に、協力を依頼された出所したての男。
感想
出所したばかりの主人公が、ドラッグを横取りされた男の手助けをする物語だ。序盤の主人公はわけもわからずその男に付き従うだけで、暇を持て余した何も考えていない男に見える。ただいざとなれば相手の指を躊躇なく折ってしまうような、男が引くほどのヤバい奴であることも垣間見せてはいる。
基本的にはドラッグを奪われた張本人である原田芳雄演じるアウトローの男がメインとなって犯人を捜す展開だ。関係者から荒っぽい手口で情報を引き出しながら順調に真相に近づいていく。
だが彼にドラッグを売るも代金を受け取れていないバイカー集団が、何かと邪魔をする。代金を回収できないと困るのは理解できるのだが、こういう場合は相手の事情になんて耳を貸さず、有無を言わさず追い込みをかけて強引に回収するのが彼らの世界の常識だろう。それなのに本当にお金を返してくれるかな?などと心配し、常に監視して付きまとう様子は必死に犯人を捜す主人公らの邪魔でしかなく、鬱陶しくてしょうがなかった。
主人公らに直接言われてしまっているが、子どもじゃないんだからちょっとは考えろよと言いたくなる。そもそも主人公側も、代金を渡すまでの担保として店の権利書を渡すぐらいの用意はあった。
だからそんな彼らがバイクに乗っている時に、主人公らにジープで轢かれてしまうシーンはちょっとしたカタルシスがあった。しかも2回。しかし車と接触してバイクが転倒するシーンはよくあるが、真後ろから豪快に轢かれるシーンは珍しいかもしれない。この映画ではそれ以外にも高いところから放り投げられたり、ジープに踏みつぶされたりと、バイクがぞんざいな扱いを受けている。昭和はワイルドだ。
バイカー軍団がいなければもっと早くに実現していたはずだが、と嫌味を言いたくなるが、終盤についにドラッグを横取りした暴力団との抗争が始まる。それまでどこかボンヤリしているように見えた主人公の顔に緊張感がみなぎるようになり、主役感が出てきた。クライマックスはなかなかの見応えだ。
この戦いを盛り上げるのは、悪役の成田三樹夫の存在感だ。その前の拉致されたシーンで動じることなく余裕綽々で、バイカー軍団を子ども扱いする姿には痺れたが、その彼との対決が最後に待ち受けているのだと思うと緊張感が凄かった。そして期待通りの戦いが繰り広げられる。
最後は、そこで終わっちゃう?みたいなところでエンディングを迎える。この後どうなるのだ?と心配してしまったが、どこかルパン三世的なアニメぽい終わり方だ。
梶芽衣子演じるヒロインがあっさりとやられてしまったり、偶然町で敵の一味と出会ってしまったりと雑な展開が目立つが、それなりに楽しめる娯楽作だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 藤田敏八
出演 渡哲也
梶芽衣子/成田三樹夫/沖雅也/深江章喜/中島葵
音楽 玉木宏樹