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「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」 2017

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 手術中に死なせてしまった患者の息子と親しく付き合ううちに、次々と家族が不幸に見舞われるようになってしまった心臓外科医の男。 

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感想

 いきなり手術のグロい映像から映画が始まりゾッとしてしまうが、登場人物たちの小津映画風の取って付けた様な喋り方、ズームインとズームアウトを多用する映像、不協和音など、映画全体に奇妙で不穏な空気が漂っている。子供たちが廊下を這うシーンも不気味だった。この雰囲気が、映画の中で起こる不可思議な出来事に説得力を与えているのだろう。それからニコール・キッドマンが年齢の割に無駄にプロポーションの良い整った体をさらけ出しており、それもまた気味悪く感じたのだが、これは計算通りだったのか、もしくは計算外か。

 

 心臓外科医の主人公が謎の少年と会うところから物語は始まる。最初は二人の関係がよく分からず、事情があって一緒に暮らしてはいない実の息子なのだろうかとか、ヤバい不適切な関係を持っている相手だろうかとかいろいろな想像をしてしまったが、やがて自身の手術中に死んでしまった患者の息子だという事が明らかになる。そしてさらには、なぜ主人公がそんな相手に会っているのかという事も徐々に判明してくる。この少しおかしな少年を家族に会わせた事から、次々と家族に不幸が襲うようになる。

 

 

 最初は起きていることの意味がよく分からず戸惑うばかりだったが、次第にこれは聖書か何かをモチーフにした物語なのだなと察するようになる。後で調べたら、劇中でも少し触れられているが、ギリシア悲劇の「アウリスのイピゲネイア 」に基づいているそうだ。「聖なる鹿」は誰なのか、そこに至るまでの主人公の心の葛藤や家族の心の動きが描かれていく。

アウリスのイピゲネイア - Wikipedia

 

  どんよりとした結末を迎えるのだが、「聖なる鹿」が誰なのか、最初から結論は出ていたような気もした。意味深なシーンやセリフが多く、あれは何を意味していたのだろうと何度も反芻してしまうような深みのある映画だ。ミステリアスだが魅力的で、何度観ても何か新しい気付きがありそうだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ヨルゴス・ランティモス

 

出演

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ニコール・キッドマン/バリー・コーガン/ラフィー・キャシディ/サニー・スリッチ/アリシア・シルヴァーストーン/ビル・キャンプ

 

撮影 ティミオス・バカタキス

 

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア - Wikipedia

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登場する作品

「イピゲネイアの悲劇」 「ギリシア悲劇〈4〉/エウリピデス〈下〉 (ちくま文庫)」所収

 

 

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